1.政権交代論

理想主義と現実主義

優位政党の自民党は、かなりの現実主義だ。それに対して野党第1党は、野党の時は理想主義的であるのに、与党になると現実主義的になる(ならざるを得ない)。これは左派政党に限ったことではない。新進党は、1996年の総選挙において、消費増税(3→5%)反対を唱えた。しかしその前身と言える細川内閣は、消費税の7%への引き上げを表明していた(名称こそ国民福祉税であったが、この場合、それは大きな違いではない。この表明は、与党内の反発で撤回されたが、主に反発した社さ両党は、新進党には参加していない)。戦前、衆議院で優位にあった自由党系は、改進党系に比して現実的(かつ機会主義的)であった。

野党が理想を語ることを全否定するつもりはないが、実現が難しいこと、現実に合っていないことを唱えていれば、与党になった時に困るのは当然である。ましてや、1党優位下の野党には、与党経験が決定的に不足している。それが与党になれば、日々の仕事に追われる面が、優位政党よりもさらに大きくなる。現実的というよりも、現実を追認するしかなくなるのだ。これでは、現実的な有権者の支持も、理想主義的な有権者の支持も、得られない。現に社会党も民主党も、政権を得ると、左右両方から強い反発を受けている。これは非常に不利だし、ブレを招いて、さらに支持を減らす危険がある。党の分裂をも招き、非優位政党の多党化、つまり1強多弱化にもつながる。

「野党第1党の主張なんて、非現実的でどうしようもない」と笑う人がいる。反日だと恐れる人もいる。しかしそれは違う。安倍内閣の安保法制についても、国民は賛否に割れていた。反対派の国民を笑ったり、軽蔑したりすることはすべきでない。賛否の一方により説得力があるということはあっても、どちらかの主張が完全に間違っているということはないと思う。

しかし、野党第1党とその支持者に、優位政党(自民党)が気に入らないというだけの人がいることも事実だ。筆者もそのうちの一人に、油断をするとなってしまいがちだ。開き直りではなく、これは仕方のないことだと思う。1党優位の弊害だ。とにかく自民党を倒さなければ、有権者が政権党を選ぶことができないという主張は、荒唐無稽なものではない。

この問題の解決は簡単ではないが、本来の理想主義的な面と共に、このような思いが、非現実的な姿勢につながっていると、少なくとも認識しておく必要がある。