日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
無意味な繰り返しから脱することができるのか

無意味な繰り返しから脱することができるのか

さて、野党第1党について書いてきたが、選挙の主役は有権者だ。それを踏まえて、次を見て頂きたい。

①野党第1党に失望(ほとんどないとはいえ、特に与党になった場合)

②野党第1党を減らして共産党等を伸ばす

③野党第1党を減らして新党を伸ばす(新党ブーム)

④動揺した野党第1党が分裂(これは冷戦終結後に限った傾向)

⑤野党第1党を中心とした再編で野党第1党が拡大(同上)

⑥どうであれ、結局は社会党~民主党系が野党第1党

⑦この間、老舗野党、新党含め、野党間で票の奪い合い

 

この繰り返しについては、これまで何度も見てきたが、今度の参院選も、見事にこの繰り返しの中にある。日本人のすることは、結局変わっていないのだ。

れいわ新選組、NHKから国民を守る党が議席を獲得したことを受けて、「時代が変わった」、「日本新党ブームの再来だ」と言う人がいる。日本新党の再来も不要だと考える筆者であるが、日本新党は比例で4議席を獲得している。国会に議席がなく、特別な支持基盤もなかった政党としては、驚異的な結果だと言って良い。つまりめったに起こることではない。それに対してN国は1議席、れいわでも2議席だ。2議席ならば、かつてサラリーマン新党も1983年に取っている(比例の定数は同じ50)。そう、比例代表で複数のミニ政党が議席を獲得する現象は以前にもあった。他にも多くのミニ政党があり、次の通り複数の、既成政党の分派ではなく、ゼロからつくられたミニ政党が議席を獲得したことが、何度もある。しかしその時には、自民党単独政権の時代であったことなどから、話題になるにとどまった(これによる間接的な成果がなかったわけではないが)。大いに話題にはなったが、野党が多党化しただけで、セロからつくられたミニ政党の多くは、議員の自民党入党によって、事実上、同党に吸収すらされた(具体的にはサラリーマン新党、福祉党、税金党)。

1980年:革新自由連合1 ※比例代表制を導入して初めての参院選

1983年:サラリーマン新党2、福祉党1、第二院クラブ1

1986年:税金党1、サラリーマン新党1、第二院クラブ1

1989年:税金党1、第二院クラブ1、スポーツ平和党1

1992年:日本新党4(党首は自民党出身)、スポーツ平和党1、第二院クラブ1

※第二院クラブは、会派としては長い歴史を持つので、ゼロからつくられたというのとは違う面がある。税金党の中心人物であった野末陳平は新自由クラブ離党者であったが、それ以前に自民党の議員であったことはない。

1995年以降は、政党の離合集散が激しく、大政党の離党者が中心となった小政党が議席を得たことはあったが、ゼロからつくられたような新党は、議席を得ていない(日本維新の会には後者の性格もある程度あるが、前者とした)。

 

注意すべきは、れいわの2議席獲得はものすごいことだが、それでも、(まだ)ミニ政党であるということだ。大勢に影響のないところで、「あの党が1議席取ったね」とか「2議席とは信じられない」とか、「あの党は話題になったけど取れなかったね」とか、そんなことを話題にして楽しむような、五十五年体制のような状況にはしてはいけない。このままだと、その繰り返しになってしまうとも考えられるが、れいわには左派野党の未来がかかっており、N国にはこれまでにない強烈な個性があるから、今回は分からない。ただ、繰り返しに終わる危険があることについては、警戒を怠ってはならない。同時に、自由な、のびのびできるミニ政党については、その行き過ぎや、政策の実現可能性についても、しっかり監視する必要がある。

筆者は今、れいわとN国をただ批判したいわけではない。むしろ評価している面もある。N国のバイタリティには圧倒されるし(後述する通り、筆者は否定的ではあるが)、れいわの山本太郎の演説には、以前からひかれていた。あのようなはきはきしたしゃべり方の政治家は、左派陣営にはいない。宝だと言うべきだろう。もしも本当に、れいわが若い層の票を左派陣営に新たに呼び込んだのだとしたら、特にそうだ。

また、れいわの躍進は、消費税の問題から目を背けることを、民主党系に許さない状況をつくった。社会党と、その流れをくむ民主党は、政権を獲得すると、それまで消極的であった(社会党時代は反対であった)消費税の増税を、いきなり決めた。れいわの消費税廃止の主張は、実現性について見方が分かれる経済政策であると同時に、野党の時はバラ色の公約、政権を取ると実現できず、という繰り返しの、総括を民主党系に求めるものである。

誰しもが負担する消費税、少子高齢化の影響、景気の影響を、比較的受けにくい、安定した財源である消費税を上げて、少子高齢化の中でも、社会保障の水準を可能な限り維持する。これは左派政党らしい政策である反面、貧しい人々ほど負担に苦しむ、左派らしくない政策でもある(左派政党が強く、福祉国家として有名な北欧諸国は、消費税重視ではあるが、デンマークとスウェーデンは所得税が日本より高い)。消費税ではなく、富裕層ほど負担が増える累進制の所得税、法人税を引き上げ、国債を増発する。これはそれぞれ富裕層の国外への移動、日本政府の債務の増加、つまり借金が増えるというリスクがあるが、それぞれ問題ないという説もある(特に後者。前者については、世界中で法人税、所得税を同じにするような、事実上それに近いような策が採れれば解決するが・・・)。

民主党系は消費税について、10%への引き上げを自ら決めておきながら、野党に戻ると不明瞭な姿勢を採っている。安倍総理が増税時期を、むしろ先送りにしてきた。消費増税反対の議員も党内にいたというのは、言い訳にはならない。安倍内閣の経済政策がうまくいかず、引き上げる状況にないというのも、自分たちのことを棚に上げているようで、好感が持てない(景気次第で上げる時期を遅らせることを、どれだけ民主党政権が想定していたのか、筆者は疑問だ)。やはり、逃げずに総括することが必要だ。

これから、どのような結論が出るにしろ、もう一度、今度はもっと良い形で他党とも議論し、国民にその姿を見せて、共に考えるということが必要だ。日本の左派は、多様性を大事にする姿勢を採りつつも、異なる意見に不寛容であり過ぎるように思われる。

 

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