日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
第3極(⑤⑨)~その投票行動~

第3極(⑤⑨)~その投票行動~

第3回帝国議会、第4回帝国議会における第3極等の投票行動も、補足として見ておきたい。

表②-A:第3議会と第四議会における各党派の投票行動

・自由党の『党報』第15号付録「民吏两軍一覧詳表」、同第29号付録「第四議会記名投票の結果」より作成

・この表で用いる政党、会派の略称の紹介は、どの政党、会派のものか表の中で特定できるため、省略する

・③は第3回帝国議会、Aは選挙干渉に関する上奏案、Bは選挙干渉に関する決議案、Cは軍艦製造費(政府案)、Dは愛知岐阜両県震災救済河川堤防費予算外支出、Eは四県土木費予算外支出削除、Fは貴族院回付予算案返送動議(貴族院の修正を否認するもの)、Gは府県監獄費国庫支弁案、④は第4回帝国議会、Hは軍艦製造費、Iは民党の五日間休会決議案

・○は賛成、×は反対、-欠席、棄権、補は補欠選挙当選のため採決日に議員でなかったこと、辞は議員辞職したために、採決日に議員でなかったことを意味する。

・主要政党、政社

政党等(多数の投票)

 

自由党 × × × × ×
立憲改進党 × × × × ×
国民協会 × × × ×

・紀州組…政界縦断派であった紀州組の投票行動は、第3回帝国議会では自由党のそれと同一歩調をとっているかのように見える。しかし陸奥が外務大臣に就いていた第4回議会期には、自由党がまだ野党的な姿勢を採っていた中で、同党と内閣の間を採るように、投票を避けている。このことからは、政界縦断の衆議院における要であった同派の、戦略を窺うことができる。

議員 変遷

 

岡崎邦輔 独→紀 × × × ×
兒玉仲兒 独→紀 × × × ×
塩路彦右衛門 独→紀 × × × ×
関直彦 独→紀 × × ×
山本登 独→紀 × × × × ×

・独立倶楽部と溜池倶楽部の双方に属したことのある議員…第3回帝国議会における上奏案と決議案については、多様な投票行動を採っているが、上奏案反対・決議案賛成が多く、軍艦製造費、震災救済に関する予算外支出については反対がいない。返送動議、監獄費国庫支弁案については賛否がほぼ同数、全体的に中立的だが、軍艦、震災については政府に近かったといえる。第4回帝国議会の採決は軍艦製造費を巡るものであるため、準与党的な投票行動となっている。なお、若原観端のH、Iは、史料に名前がなかったため空欄とした。

議員 変遷

伊東祐賢 独→溜→盟 × × × × ×
加藤六蔵 独→溜→盟 × × ×
西川義延 自→独→溜→盟 × ×
伊藤謙吉 独→溜 × ×
植田清一郎 独→溜 × ×
森本藤吉 独→溜 ×
植田理太郎 独→溜→芝→務 × ×
岡崎運兵衛 独→溜→芝→務 × × ×
川越進 独→溜→芝→務 ×
玉田金三郎 独→溜→芝→務 × ×
若原観端 →独→溜→芝→務 × × ×
佐々田懋 独→溜→自 ×

・独立倶楽部に属したことがあり溜池倶楽部に属したことがない議員(紀州組参加者を除く)…第3回帝国議会における上奏案と決議案については、多様な投票行動を採っており、特徴を見出すことができない。軍艦製造費、震災救済に関する予算外支出については賛成が多い。返送動議、監獄費国庫支弁案については前者に賛成が、後者に反対が多く野党的な投票行動を採った議員が多いといえる。第4回帝国議会においては軍艦製造費に対する賛成が少なく、五日間休会決議に対する賛成が多く、全体的には野党的になっていったのだといえる。

議員 変遷

大須賀庸之助  自→独→盟
稲垣示    独→東自 × × ×
谷順平    独→東自 × × × × ×
鵜飼郁次郎    独 × ×
吉岡倭文麿    独 × × × × ×
加藤政一   →独 × × × ×
関戸覚蔵   →独 × × × ×
武部其文   →独 × × ×
八田謹二郎   →独 × × × ×
片野東四郎  中→独
岩城隆常    独→有 × ×
斎藤善右衛門 東北→独→有 × ×
佐々木善右衛門   独→芝→務 × ×
木下莊平  →独→国 × × × ×

・溜池倶楽部に属したことがあり独立倶楽部に属したことがない議員(実業団体参加者を除く)…第3回帝国議会における上奏案に反対、決議案の投票を回避した議員がやや多い。軍艦製造費については賛否がほぼ同数だが、中央交渉部に属したことのない議員だけを見ると反対が多い。震災救済に関する予算外支出については反対がいない。返送動議に対しては賛否がほぼ同数で、監獄費国庫支弁案については反対が多い。地価修正派が多く含まれているため、その取引材料となった後者については、地価修正がならなかったため、反対したのだと考えられる。第4回帝国議会を見るとほとんどの議員が、民党と同じ投票行動を採り、野党化が顕著になっている。

議員 変遷







③    I
大東義徹 溜→盟 × ×
川島宇一郎 溜→盟 × × ×
中小路與平治 溜→盟 × ×
林田勝九郎 溜→盟 × × ×
山口千代作 北→溜→盟 × ×
川真田徳三郎   溜 × × × × ×
椎野伝治郎   溜 × × × × × ×
角利助   溜 × × ×
曽我部道夫   溜 × × × ×
俣野景孝 中→溜→阪 × × ×
橋本善右衛門 中→溜→阪 × × × × ×
五十村良行 中→溜→芝→務 × × × ×

・その他で芝集会所、政務調査所、東北系による会派のいずれかに属したことのある議員…第3回帝国議会における上奏案は反対、決議案は芝集会所系が反対、東北系と京都の対外硬派が賛成、軍艦製造費、震災救済に関する予算外支出については大多数が賛成。返送動議と監獄費国庫支弁案については、前者は反対、後者については賛成が多いが、前者は東北系だけを見ると賛成が多い。第4回帝国議会においては軍艦製造費についてはやや賛成が多く、休会については賛成が多い。全体的には政府に近い投票行動を採っているといえる。なお、神鞭知常のH、Iは、史料に名前がなかったため空欄とした。

議員 変遷 ③A ③B ③C ③D ③E ③F ③G ④H
坪田繁 芝→国 × × × ×
清水文次郎 芝→務 × × ×
石原半右衛門 芝→務 × × × ×
坂田丈平 芝→務 × × ×
渡部芳造 芝→務 × ×
渡辺磊三 芝→務 × ×
西毅一 芝→国→務 × × ×
田中源太郎   芝 × × ×
安部井磐根 有→務 × × ×
神鞭知常 有→務 × × ×
坂本則美 有→務 × × ×
藤沢幾之輔 北→有→務 ×
村松亀一郎 北→有→務 × ×
工藤卓爾 北→有 × × × × ×
宮城浩蔵 × ×

・その他で同盟倶楽部に属したことのある議員…第3回帝国議会における上奏案については賛成がやや多く、決議案は賛成が多い。軍艦製造費、震災救済に関する予算外支出については賛否がほぼ同数である。返送動議、監獄費国庫支弁案は、前者について賛成が多く、後者については反対がやや多く、全体的には野党的な投票行動だといえる。第4回帝国議会ではその傾向が強まっているといえる。

議員 変遷 ③A ③B ③C



④H
浅尾長慶 中 → 盟 ×
天野伊左衛門 中 → 盟 × × ×
船坂与兵衛 中 → 盟 × × ×
斉藤良輔 中→有→盟 × ×
柴四朗 北 → 盟 ×
佐藤里治 北→中→有→盟 × ×
加賀美嘉兵衛       盟 × × ×
河島醇       盟 × × × × ×
楠本正隆       盟 ×
斉藤斐       盟 × × × × ×
鈴木重遠       盟 × × × × ×
中村弥六       盟 × × × × ×

・その他で東洋自由党に属したことのある議員…基本的には民党と同じ投票行動であった(新井については⑦参照)。ただし、軍艦製造費に関する投票回避が目立つ。

議員 変遷








飯村丈三郎 自→東自 × × ×
森隆助 自→東自 × × ×
新井章吾 自→東自 × × ×

・実業団体に属したことのある議員…第3回帝国議会における上奏案と決議案に反対、第4回帝国議会における軍艦製造費には賛成と、準与党としての投票行動を採った。

議員

 

変遷

 










牛場卓蔵 中→溜→実 × × ×
北岡文兵衛 中→実 × × ×
小坂善之助 × × ×
中沢彦吉 中→独→実 × × × ×
原善三郎 中→実 × × × ×
原亮三郎 中→実 × × × ×
村野山人 中→実 × × × ×

・井角組に属したことのある議員…大方準与党としての投票行動を採ったが、投票しなかった議員が多少いる。

議員 変遷








井上角五郎 中→井 × × ×
黒川修三 中→井 × × × × × ×
前田篤之助 中→井 × × ×
松浦唯次郎 中→井 × × × ×
渡辺又三郎 中→井 × × × ×

・大阪派の議員(2名は溜池倶楽部参加、独立倶楽部不参加者と重複)…第3回帝国議会については準与党としての投票行動を採った。しかし第4回帝国議会における、軍艦製造費に対する賛成の少なさが目立つ。

議員 変遷








俣野景孝 中→溜→阪 × × ×
外山脩三 中 → 阪 × × ×
橋本善右衛門 中→溜→阪 × × × × ×
村山龍平 中 → 阪 × × × ×
浮田桂造 中 → 阪 × × × ×
兒山陶 中 → 阪 × × × ×

 

 

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