日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
次の総選挙はどうなるか

次の総選挙はどうなるか

次の総選挙はどうなるのだろうか。自公vs維新vs民主系・共産vsれいわだと、特にれいわが民主系に与した場合、維新は民主党系と、どんなに良くても互角だろう。大阪府を除けば、例えば維新の大ブームがなくても当選し得るような、力ある候補者はほとんどいない。新人候補ばかりである。党の支持率が高くても、それだけで民主党系と渡り合えるわけではない(比例区は別としても)。

ここで少し、総選挙のシミュレーションのようなことをしてみたい。複雑になるので、れいわ新選組を除外して考える(れいわが民主党系との選挙区調整なしに候補を立てれば、その分だけ、民主党系候補の落選の可能性は高まるが、それでも勝てるだけの力を持つ議員もわずかながらいるし、何より、それほど多くの候補者を立てる力がれいわにあるとは考えにくい。野党共倒れの批判を受けることにもなってしまうだろう)。

 

①自民・公明vs民主党系・共産vs維新となった場合

・維新は大阪、その周辺のごく一部では伸びるが、他ではほぼ伸びない(つまり大阪以外小選挙区の当選者はごく少数にとどまる)。ただし比例では大きく伸ばす。もし国民民主党(の一部)が維新の会に寄れば、維新側の議席はある程度は増える(選挙区にもよるが、維新に寄ろうとするのは近畿地方の議員が多いだろう。そこでは共産党などが対立候補を立てても、維新の人気で自民党に勝てる可能性が十分ある)。

・民主党系は、近畿地方では議席を伸ばせず、本来伸ばし得る東京都、神奈川県などの都市部で、維新の会の対立候補にかなり票を削られ、苦戦する。よって自民党に逆風となっても、なかなか議席は伸ばせない。

・その結果、自民党は大阪府で一定程度減らすだけで、またもや大勝と言える結果を出す。逆風が非常に強くなって、有権者がより戦略的な投票をする状況になっても、自民党が第1党、あるいは自公両党で過半数という政権継続の条件はクリアする。あるいは万万が一それがクリアできなくても、過半数割れの度合いは非常に小さく、他党や無所属の当選者を入党させることで、あるいは維新の会の協力を得ることで、容易に乗り切る(その場合維新の会が発言力を強めるのは難しい)。反対に、内閣・自民党の支持が回復していれば、大阪でも自民党は議席を減らさず、全体的に現状より、民主党系が議席を減らす(今でも決して多くはない、議席を減らす)。

・維新の会が野党第1党になる可能性は低い(実現した場合については「もし維新の会が、野党第1党になったら・・・」参照)。民主党系の支持回復が難航する中で、民主党系のスキャンダルばかり出て来る、といった状況にでもならない限り難しい。しかしスキャンダルという事で言えば、維新の会も、特に議席を増やした場合には、無縁でひられないだろう。立憲民主党が野党が野党第1党の地位だけは固めれば、維新の会はおそらく、同党よりも自民党につくだろう。そうであれば競争重視の保守対、平等重視の左派という構図に近付く、あるいは、そのような構図が明確になるという言い方もできる。それには自民党が、調子が良いのにもかかわらず変化をしなければならない。そのためには維新の会が自らの人気や、自民党大物とのパイプを生かして変化を促すことが重要となる。しかし、日本が本当にどうにもならないという状況になるまでは、自民党が聞く耳を持つ可能性は低い。そうなると、維新が自民に利用されて弱体化するか、場合によっては切り崩されたり、飲み込まれるという、過去の歴史が繰り返される。

 

②自公vs民主党系・共産・維新 (維新は積極的な協力ではなく、最低限のすみ分けとなるだろう。希望の党とのすみ分けだけでも不評だったのだから、考えにくいことではあるが、それでもあり得ないとまでは言えない)。

・自公両党はよほど順境にない限り敗北し、少なくとも過半数割れに追い込まれる。

・民主党系、維新の会がそれぞれ大きく伸ばすが、左派野党(民主党系や共産党)だけで過半数を上回るのは難しい。

・その結果、維新の会がキャスティングボートを握る(もし上の予想が外れて、自公両党で過半数をわずかに上回っても、安定した政権運営のため、それが可能だと見せつけるために、自民は維新の支持を取り付けようとするだろう)。

→ここで未来は分岐する。

A 自民、公明、維新の3党連立になる(公明党も受け入れざるを得ない)

B 総選挙大敗の責任問題が自民党内の力関係に変化を起こせば、自民党と民主党系(あるいはその一部)との連立になる可能性もある。自民党と公明党が離れるということはないだろうが、民主党系にとっては、公明党や維新の会を影響力を弱めるための、かつての自社さ政権に近いものとなる(自社さ連立成立の経緯については後述する)。

C 選挙戦の延長で、とりあえずは民主系中心の政権ができる。共産党や維新の会は姿勢を試されるが、連立に加わらなくても(加われなくても)、選挙結果を尊重して閣外協力まではいく。

・自公が惨敗すれば、状況は混とんとしたものになるだろう(混とんとしないというのは良い事のように聞こえるが、簡単に自民党中心に戻るということである)。自民党が本当に壊滅までいけば、やがて維新vs民主党系という、小泉自民vs小沢民主の時のような、欧米の基本に近い状態となる。自民党はイタリアのキリスト教民主党のように、分裂した上で、それぞれの陣営に入るだろう(まとまってキャスティングボートを握ろうとするかもしれないが、それは難しいだろう)。

・自公が力を維持しても、混乱は避けられない。当面は、国政も含めて大阪に関することは維新優先、他は民主優先という、「休戦協定」に近い合意があっても、いずれ「民維連立」内の対立は激化するだろう。自民党と民主党系が抜きん出てはいても、双方の内部にも不満がたまる可能性があるから、政党の離合集散も激しくなりそうだ。例えば民主党系の右派(国民民主党)から、維新の会に移る勢力が現れることが考えられる。あまり見たくない未来だし、そうとすらならず、維新がやはり自民党に寝返る可能性がより高いが、好き嫌いでなく、理念、政策による再編になれば、それでも道は開けるかも知れない。しかし国民の堪忍袋の緒が切れるということはも、十分考えられる。もし、民主党系と維新の会が大人になって、最低限の協力を続けられるのなら、【自民党衰弱・民主党系と維新の2大政党制】へと進むだろう。

・民主党政権末期のように多党化が進む可能性もあるとは思うが、中小の政党は結局大政党の陣営に付く可能性が高い。2ブロック化は、可能なら一番良いと筆者は考える。今後の政治をどうするか、国民を巻き込んだ議論も起こりやすいと思う。

 

以上だが、自公が過半数割れに追い込まれれば、本来相容れない勢力による野党共闘がその基礎になることからも、様々な展開があり得る(自公2党に比べれば、立憲民主と国民民主の関係すら危ういと思われる)。本来は第1党を中心とした政権で決まりのはずだが。1党優位の日本では、自民党は第1党のままであったとしても、過半数割れを起こした時点で、国民から決定的にNOを突き付けられたという解釈になるし、逆に立憲民主党が第1党になっても、民主党政権の再来を阻止しようとする、自公維の動きが起こり得る。

本当は、立憲民主党か維新の会が単独で過半数を得れば決まりなのだが、そんなことは、特に維新の会については、起こりそうにないし、民主党系についても、どれだけ再統一が進むかという問題がある。2009年は奇跡であって、それを目指すのは良いとしても、また起こるだろうなどと安易に期待すべきではない(そんな人もそうそういないだろうが)。

自民・維新vs左派野党となっても、左派野党が自民・維新ブロックと渡り合えるようになる、という可能性はあるだろうか。維新の会は民主党系よりももちろん自民党に近いから、このケースでも政権交代が起こり得るのなら、現実的には最善のシナリオだということになる(議会政治の基本をマスターできる)。これはもちろん非常に難しい。しかし対立軸を明確にすることができれば、少し時間はかかっても、可能性はないことはないと思う。一番現実的な未来像だから、他の方法も排除はしないとしても、それで政権交代の定着が実現できるような、魅力的な対立軸を演出する努力が重要だ。もちろん自民党・維新の会も、対立軸を明確にするすべきだ。良いところ取りの虚像よりも、重要な対立軸を示す努力を、そしてもちろん、しっかりとした政策を示す努力を、リスク覚悟ですべきだ。選択肢が2つというのは少ないように見えるが、自公維は自公維で、民共れは民共れで、それぞれのブロックで議席数や支持率(次の選挙で勝つ見込み)に見合う影響力を持つ。

恐れるべきは自民党の議席が減らないことだが、自民党が数十議席減らし、民主党系も多少伸びて、維新の会は大幅増、となって終わるのもこわい。それが自公大敗、野党大勝と報じられ、国民の不満のガス抜きにだけはなって、政権の枠組みは変わらず、気が付けば自民党1党優位がより固まっている、ということも大いにあり得る。それで満足してしまうという傾向が、日本には確かにある。現状を変える冒険をせず、たとえそれが野党内に限定されたものであっても、少しの議席の変動で満足し、奇跡の当選、まさかの落選などのドラマもいくつか見られれば、もう十分満足だといったところだ。

筆者の考えは、左右の対等な勢力から、有権者が選択をすることができる、政権交代の定着を急ぐことだが、楽な道はない。そこにつながりそうな道はいくつかあるものの、近道はなさそうだ。

だから今できることは何でも、チャレンジすべきだと考える。ただし民主党系と、中立として振る舞おうとする維新の会との共倒れ、というよりもそれによる自民党の漁夫の利は本当に避けたい。特に今のように、国民が自民党に失望しているにもかかわらず、それでも自民党が勝つと、国民が十分に状況を理解しようとせず、戦略的な投票をしなかったためだとしても)選挙そのものに対する失望が広がる。民主党系が選択肢としてなかなか認められないことも当然問題であり、そのせいで自民党の支持率は今も踏みとどまっている。それについては近く改めて述べたい。

維新の会が候補者を多く擁立することは、自公を利する可能性が高い。例えば、2020年の目黒区長選では、維新の候補が健闘はしたと言えるものの、2位の立憲民主党系の候補(無所属として立候補。維新の党出身だが、こういう例は他にもある)の足を引っ張ったに過ぎない。

そうではなく、維新の候補が立っていなければ、その票の多くは、むしろ自民党が得ていたという見方もあるが、筆者はそうではないと考えている。

2020年、都議選と同日に行われた4つの都議補選の結果も見ておこう。当選は全て1位のみである。

大田区:1位 自民  2位 維新 3位 立憲 ※維新の都議が参院選出馬で辞職したため

北区 :1位 自民  2位 立憲 3位 維新 ※現在維新の参院議員である音喜多が区長選出馬で辞職したため

日野市:1位 自民  2位 共産 ※自民党議員死去のため

北多摩3区:1位 自民  2位 共産 3位 生活者ネットワーク

※長男逮捕を受けた共産党議員辞職のため

 

ちなみにここには、野党共倒れ以外の問題も表れているように見える。民主党系が勝てそうな選挙区を取り、そうでない選挙区を共産党に回しても、左派野党は一切議席を得られないという極端な結果になっている。しかし補欠選挙が行われた事情もあるし、地方議会の補選と、国政の通常の選挙とでは、投票率など様々な違いがあり、総選挙もそうなるとは言い切れない。それでも危機意識は持っておくべきだが。

日野市は、自民対共産となった割には、大差をつけての自民党勝利ではなかった(自民党議員の死去による補欠選挙であったにもかかわらず)。他は一定の差がついているが、全て、維新も含めて野党が1本化すれば、こぼれる票が大量にない限りは、勝てる程度の差であった。そして民主党系と維新の票差も大きくはない。

確かに、4月に行われた衆議院静岡4区補選は、自民党と民主党系(国民民主党系が無所属で出馬)の一騎打ちに近かったのに、自民党が大勝した。これでは共倒れ以前の問題である。もし立憲、国民両党の不和が災いした面があるのなら大問題だ。だが投票率が下がる補欠選挙は、組織票で圧倒する自民党(自公)に非常に有利である上、静岡4区は自民党が強く、補選は自民党議員の死去を受けたものであった。都市部を離れれば離れるほど、自民党有利の傾向は一般的に強くなるということもある(静岡4区は静岡県静岡市清水区等だが、すでに述べた通り自民党が強く、2009年以外は民主党が勝ったことはない)。このような例だけで、「維新の会が候補を立てなくても、民主党系は勝てない」と見ることはできない。維新の会は、大阪を除けば大都市とその周辺を狙って候補者を立てようとしており、それは、そういった選挙区でないと、勝つ見込みが全くないからだ。

このままでは国民が、自民党と互角の、つまり政権交代を現実的に意識できるような選択肢を得られないままに、少なくとも数十年が、また経ってしまうのではないか。それでは野党の、貴重な与党経験が失われてしまう。とにかく心配だ。

もちろん、維新の会が民主党系と協力しようとしても、民主党系が協力してくれるかも分からない。あるいは大阪以外では、一方的に譲歩を迫られるかもしれない。それに立憲民主党だって、大阪では維新の票を削って、自民党に漁夫の利を得させるかも知れない。今の自民党と違って、民主党系の場合は、中心部が大阪都構想に反対だ(国民民主党の一部に、希望の党騒動以来行き詰っている前原誠司など、維新の会に寄る動きはあるが)。だがそれでも、民主党系も維新の会も、政権交代が皆無であるという、民主政の土台の欠陥に関する問題意識を、共有しなければいけないと筆者は考える。何らかの手を打つべきだ。

 

維新の会のカード→

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