自民党に入りたい

2012年12月、民主党が総選挙で大惨敗して野党に戻ると、自民党に移る議員、移ろうとする議員が散発的に現れた。これについては『政権交代論』「民主党→民進党の保守系」で確認し、最新の事例を書き加えている。

このような議員は新進党時代にもいた、離党するだけのもっともらしい理由を見つけては、「自民党に入って自民党を変える」などと言って合流するのである。もっとも最近ではそんな口もたたけず、媚びるような姿勢の議員も少なくない。

もちろん、離党される政党に問題がある場合もある。しかし「問題」というのはどこにでもある。自民党に当然ある。彼らはそのたびに政党を移るのではない。野党から与党に移るのだ。こんな「寝返り」をすることで、何かよくなったのか。むしろモラルが崩壊し、野党内に、「自民党に移ることは恥ずかしくない、自民党に入れてもらえるように、選挙区で強くなろう」という議員を増やしただけではないだろうか。

長島昭久議員の例を挙げよう。彼は2017年、つまり小池ブームの中で民進党を離党、入らないと言っていた小池の政党(希望の党)に入った。東京都内選出の衆議院議員(当時は東京ブロック比例復活当選)であったから、次の総選挙で落ちるのが怖かったのだろうか。

その後、希望の党が、国民党(民進党と合流して国民民主党を結成するための政党)と、希望の党(小池寄り、日本のこころ出身者)に分裂すると、どちらにも入らず、結局自民党入りした。そしてこの先がなかなかすごい話なのだが、自民党内で選挙区の移動、それも立憲民主党の菅直人元総理の選挙区への移動を指示され、受け入れたのである。

確かに長島は民主党系の中でも保守系であり、菅直人とは差異が大きい。しかしだからといって、かつての党首の選挙区で出馬するなど、恥ずかしいと思わないのだろうか。いや、菅直人を落選させるべきだという考えであるなら分かる。しかしそんなことは、筆者は聞いたことがない。それらなら民主党内閣期の2012年に、自分の意志で菅直人の選挙区に移って出馬した、横粂勝仁の方がまだましである(筆者は認めないが)。

2020年に入ってからは、また一つ、最低だと言わざるを得ない例が出てきた。国民民主党を離党した参院議員の桜井充が、自民党の会派に入ったのである。理由は、与党でないと十分仕事ができないというものであった。これは本当に、選挙による政権交代を否定するのに近い。どの党が与党になるかを決めるのは所属議員ではなく国民(有権者)である。

桜井は、立憲民主党に反感を覚えていたようだ。民進党時代に、蓮舫代表を批判している。しかし同時に、モリカケ問題を厳しく追及していた。そして何より、2016年の参院選において、共産党等と政策協定書をかわしている。そこには安保関連法案や原発の廃止、さらには安倍政権の打倒が記されている。まさかそれを自民党会派で実現させるつもりなのか(桜井の自民党会入りは安倍内閣期)。

協定を反故にして、反対側であり、与党である、自民党の会派に移ったのだ。これはどんな理由があろうと、選挙の結果、有権者の意思、支持者の意思を無視した軽蔑すべき行動である。議席を返上すべきだが、そんなことが理解できる人間なら、そもそもこんな愚かな行動はしない。

議員を辞職するのなら、民主党系を否定するのも、自民党に入るのも自由だ。人間変化することはあるし、民主党系にも非はある。しかし桜井は選挙区選出の議員である。比例選出議員の場合、議員辞職をすれば、民進党の名簿から、次の候補が繰り上げ当選となる。その議員は民主党系だし、民主党系の所属であり続けるべきだ。一方、選挙区選出の議員の場合は、補欠選挙が行われる。民意を問うのだから問題はないとも言えるが、費用がかかる上、通常の選挙よりも投票率が低くなってしまう。それ自体も、投票所に人を呼べない野党も問題ではあるが(しかし2021年4月の補選は3戦3勝)、組織票が多く、利益誘導等が可能な、自民党の候補が当選しやすい。それでも民主党系が勝たなければいけないのだが、自民党がどれだけ有利か、これまで見て来た通りだ。

だから、一議席の重さもあるし、個人的には議員辞職しても怒りは収まらないのだが、議員辞職をするなら、良しとするしかないということだ。そしてせめて、それを前例にすべきだ。

民主主義国として情けないことだが、優位政党があまりに有利で、人材も集まりやすく(すべてが優れているわけでは全くないとしても、また野党に志のある議員が加わっているとしても、傾向としては)、不利な野党ではごたごたが続く。すきを見て、口実を見つけた議員が自民党入りを模索する。これを止めなければならない。民主主義国として、最低限の体裁を整えなければならない。

民主系から自民党に移る議員には、共産党との共闘反対を理由にする者が少なくないが、自民党は公明党と組む(こうなればますます、野党はまとまるしかない。2009年は例外で、多くの出来事が重なった、奇跡だと言える)。そして自民党は、大阪では共産党とも、反維新で組むことがある。それで離党者が続出することはない。仮に国政で共産党と連立を組んでも、優勢でいられる間は離党者は出ないと想像する(実際には公明党が受け入れられないという点で、あり得ないに近い事だが)。自社連立の時もそうであった。

もっとも、そんなことまでしなくて良いほどの力を、戦前から蓄え続けているのが自民党だ。だから中小の政党が寄って来るし、共産党と協力するとしても、全体的には責められない程度に、「器用」に利用することができる。利益誘導をしにくい野党ばかり、右へ寄っても左へ寄っても、票が離れるのだ。

最後に補足したい。比例選出の議員が異なる陣営の政党に移るのは、最も罪が重い。彼らは政党に(政党の名前で)投じられた票で当選しているからだ。
「いや、自分は個人名での票が多く、むしろ政党に貢献したのだ」と言う参院議員もいるかも知れない。それとて、その政党に属しているから得ることができた票かも知れないので、納得はし難い。しかしその点で百歩譲るとしても、よほど多くの個人票を得た議員でないと、納得はできない。例えば、2001年に最多得票、2007年も自民党逆風の中、2位の得票(自民党では最多得票)で当選した、舛添要一の自民党離党、新党改革結成の例である(正確には改革クラブに入党し、それを新党改革に党名変更)。