日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
その財源について

その財源について

次に、財源の問題に移りたい。平等重視の政策、国民の暮らしを直接助けるような政策については、予算の確保が当然問題になる。前述の通り、人の不安に向き合うにも、工夫の余地はあるとしても、コストがかかる(診察が遠隔、さらにはAIで可能になっても、こればかりは生身の人間が、しかもなるべく目の前で応えることが避けられない)。民間を活用する方法もあるのだが、国や自治体の主導でなければ、あるいはその補助がなければ、利益偏重のものになりかねない。どちらにも長所と短所があり、それを活かし合い、補い合うのが理想だ。コストがかかると言うと悪いことのようだが、雇用が生まれ、お金も回る。

社会保障の給付や社会保障関係の歳出はどんどん増えている。減らせるところもないとは言わないが、かなり難しい。無駄、不当、不正を慎重に無くしていくことは重要であっても、それらが占めるウエイトはそう大きくはないだろう。生活保護費はむしろ、新型コロナ蔓延の影響で増えるだろう。

民主党政権時代、仕分け等もしたが、同党が野党時代に考えていたほどの財源は生まれなかった。リーマンショック、財務省の影響もあるが、やろうとしていた事に比して財源が全然足りなかったから、消費増税の話が急浮上したと言える。あれは経験不足だったのか、やり方がだめだったのか。それともあれが本当に限界だったのか。重要なところには切り込めず、抵抗は小さいが重要でもないものばかり削減しても効果は小さい。悪しきものほど抵抗が強いとも考えられる。このことは、民主党政権の仕分けについても指摘されている。民主党政権の仕分けについては、予算を削りたい側であるとはいえ、民主党が問題視していた官僚組織の、最高位に位置するとされる、財務省の影響が強かったという見方もある。

限界があるなら当然、別の財源を考えなければならない。いや、そうでなくても、スピードを求められるから、歳出を減らすことをあてにしてはいられない。

仕分け自体は意義のあるものだが、やるならパフォーマンス偏重ではなく、本当に問題のあると考えるところに、まずはターゲットを絞り、本気でかからなければならない。それだけでは、旧郵政省を敵視した小泉自民党などと同じになってしまう。あっちを削ってこっちに使いたいというのを、セットで具体的に分かりやすく示すべきだ。それなら、国民をうまく、有意義な形で巻き込める。細かくは色々あっても(あるべきだ)、やはり1つ(1組)、重要で分かりやすい、象徴的な歳出の転換があると良い。強行しようとすれば反発が起こって、それが反対陣営に利用されることもあるから、国民も注意が必要だ。外部も含めて、人材が十分得られる場合に限り、他に財源を求める給付・負担軽減策と、2チームないし3チームで同時にやるべきだろう(もちろん各チームも、全体の方向性を見失わないような形で、さらに細かく担当を分ける)。

まずは他の財源を優先すると述べたばかりだし、格差を拡大、貧困を悪化させることがあってはならないが、仕分け等の改革で有意義に歳出を削減した場合、国民は負担増についても、納得しやすくなる(国会議員も身を切るべきだという意見があるが、政治活動、選挙活動にもお金がかかるから、筆者は現状で良いと考える。ただし、ITももっと活用して、選挙にカネがかからないようにし、政治資金が不正に使われないようにすることは非常に重要だと考える)。

民主党政権も苦しめられた、ねじれ国会になった場合の問題も今は置いておくとして、民主党政権が苦しんだ財源の問題について続けたい。経済を成長させて税収を増やすことには、どの政党も努力をすべきだと思うが、直ちに大きな効果が現れることを、織り込むべきではない。

国債をより多く発行するか、増税するかということになるだろう。増税はさらに、累進性強化、資産課税(二重課税という批判がある)など、富裕層の負担を引き上げる方法か、それとも消費税のさらなる引き上げか、ということになる。もちろん、それらを組み合わせることもあり得る。

消費増税は評判が悪いから、一応改めてフォローしておくと、仕事を引退した高齢者など、所得が少なくても裕福な人は一定数いる。そのような人々も含め、誰も逃げられないのが消費税だ(国外に脱出すればさすがに別だが、脱出した先にも消費税はあるだろう)。現役世代にばかり負担を押し付けないのが、消費税なのである(子供が払う分は、確かにその親である、現役世代の負担になるが)。

もちろん正確には、消費税を納めているのは、例えば店などの、企業や個人事業主である。彼らは一般の消費者や納品先に、増税分を事実上転嫁できないことがある。いくら違法だと言っても、買う方はより安いところから買う権利があるから、取り締まるのは難しい。小売りの場合は、競争相手が莫大に存在するし、より安い店を選んだ消費者が転嫁を拒んだのだと、結び付けることは当然できない。下請けの場合は、納品先が(事実上)転嫁を拒むようなことをすれば、問題にはなりやすいが、下請け企業がそれを事実上受け入れれば見過ごされがちになる。

低所得者層はもちろん、多くの人々にとって、消費税が大きな負担であることは間違いない。過去、消費税が増税されるたびに消費が冷え込み、その悪影響はしばしば尾を引いた(様々な要因が重なるため、因果関係を簡単に明らかにすることは難しいが)。税金が上がっていくだけでは苦しいばかりだし(日本は税が安いという見方もあるが、税に準ずるものだと言える社会保険料を加えると、安いとは全く言えない)、経済を成長させることで税収を伸ばすことも非常に重要だ。その腰を折るような増税をしては、元も子もない。慣れれば増税したことの悪影響が小さくなる面があるとしても、少なくとも非常に効率は悪い。

給付付き税額控除などの大胆な策を採らない限り、これ以上の消費増税は難しい。これまでは、「自民党のやる事だから仕方がない」と受け入れられてきたが(実際に増税された時は全て自民党政権である)、コロナ対策等で、自民党にも厳しい目が向けられている。しかし大胆な負担軽減策を採れば採ったで、増税することによって得られるはずの、税収がしぼむ。

社会保険料を含む税負担について、早急に左派政党間で、場合によっては維新の会も入れて、議論すべきである。維新を入れれば、もっと歳出を絞れるという話になるだろう。繰り返すようだが、維新の言う議員の定数、報酬の削減は、身を切ることのアピールにはなっても、大きな歳出削減にはならないし、議員を減らすにも限度がある。例えば国会議員が10人になれば、多様化している1億人の国民の、民意をうまく政治に反映させられなくなる。10人は極端だとしても、何人まで減らせるのか、改革ブームで冷静さを失うことなく、他国の例も参考にし、議論する必要がある。議員を減らした結果、世襲など、コネのある候補しか当選しなくなったり、国会が一つの色に染まり、警鐘を鳴らす議員がいなくならなったりしては、むしろ危険である。また議員の数とは別に、議員のスタッフ等の充実が必要だという考えもあるのである。

全国民に一度給付をする場合にも、富裕層には所得税として戻してもらう方法もある。左派政党は時限的な給付に積極的だ(れいわに限ればインフレ率が2%以上でない期間はずっと給付する方針だ)。また、税の累進性の強化にも積極的だ。しかし政権を取った時、富裕層や大企業が国外に出てしまうという理由から、急に慎重になる恐れがある(もうかつての民主党とは違うと思うが)。

筆者は、富が国外に流出しない方法を可能な限り採りつつ、富裕層の税負担を強化すべきだと考える。その努力をすべきだと考える。格差が拡大し、ごく少数の人々にあまりに多くの富が集まっていることを考えれば、本当は他国と協調して取り組むテーマであり、そのような動きも見られるようになってきたとはいえ、まず差し当たり、国内で方策を検討して、試してみるべきだと思う。

今も大企業、富裕層の税逃れについての対策は採られてはいるが、不十分だ。IT企業に、利益を上げた国できちんと納税させることも課題であり、国際的に取り組まれ始めている。一見限界があるように見えるが、世界的に、一般の人々の不満は高まっており、放置するのも危険だし(特にポピュリズム政党は税を逃れようとする者に対する敵意を育てる。現状問題があるから、それを安易に否定することも難しい)、国際的にその限界を突破することは可能だと考える。

ただし、新自由主義的な政権、左派政党のものでも新自由主義を取り入れる政権は、非協力的になり得る。筆者は、ある程度不満をあおっても良いと思う。なぜなら、IT企業は従来の企業を圧迫するものであり(その前は、例えば個人商店が大型店に圧迫され、その大型店が今はIT企業のネット販売に圧迫されている)、そこにはIT企業が税を逃れやすい事も含めて、あまりに有利であることも影響しているからだ。

増税について述べているが、国債の増発も選択肢ではあるし、どちらか一方に絞る必要はない。「財源が十分でなければ国債を増発する。増税によるダメージの回避、軽減、景気対策にもなる」と訴えるしかない。しかし国債は後の増税だと見られている。その通り、新与党が信頼された時に増税に舵を切るのか(国政選挙の前に正直に示し、国民の意思を確認する必要がある。自民党政権ではないのだから、国民に疑念を持たれたら選挙で負けてしまう)。それは消費税中心とは全く限らず、富裕層に多めに負担してもらうことも十分考えられる。とは言っても、負担はできるだけ増やしたくないから、MMTも排除せず、増税の幅を小さくする議論をする。一度その政策に多くの人が納得し(そもそも納得されなければ、政権交代、国政選挙での連勝を含めた政権の安定はない)、実現した政策については、政権が再度変わっても、よほどのことがない限り、つまりその路線が破綻していると多くの人が考えない限り、なかなか元には戻せないものである。

れいわ新選組は、富裕層の負担増を唱えているが、国債の増発による金融緩和・財政出動を優先している(自民党の財政出動が足りないとしている)。MMTに則っており、インフレ率が2%に達した場合、急激なインフレを回避するため、必要に応じて引き締めるという考えだ。その引き締めとは、給付の削減、富裕層への増税である。前者は、再びデフレになるまでの、デフレ脱却給付金(れいわが導入を主張)の支給停止である。そして富裕層以外にとっても、給付が減るという点では負担だが、インフレ率が2%に達していれば、景気が上向きとなり、収入も増えるということだ。

筆者は、少なくとも現状では、消費税の増税には反対だ。しかし一方で、国債頼りになるのも正直心配だ。(まだ)問題ないという話を聞けば納得できるところもある。しかし、国債を国内でずっと消化できるという保証はない(国外の買い手に頼るようになれば当然危険だ)。国の資産には、そこまで多くはないとも聞くが、売却が非常に難しいものもある。

日銀が引き受けるとしても、どこまでインフレを起こさずに耐えられるのか、疑問が消えるわけではない。国債の下落・金利上昇のリスクもある。市場における買いオペではなく、日銀が直接引き受けるのなら法改正が必要であるし、そこまでする姿勢を示した場合、世界的にひどい悪印象となるリスクがある(先進国が動揺の考えになっていない限り、信用を失う)。

MMTなら、財源は今より格段に増えるのかもしれない。経験も規模もしがらみもそれなりにはある民主党系が、批判も多いMMTを採用するは難しい。しかし何事も検討する価値はある。手段を選んでいられないような深刻な状態だからこそ、慎重さと共に、知恵や工夫も必要なのである。

MMTに準ずるとしても、過信はせず、慎重に進めることが最低限必要だと思う。新与党(今の左派陣営)内で、MMT積極派と慎重派が、日々議論するのでも良いと思う。れいわが方針を示し、民主党系がチェックするのでも良いと思う(決定は立憲民主党を中心に、連立与党で合意して下す)。MMTも、日銀が無限に引き受けられるという話ではないのだし、どこまで毎年の(あるいは一時的な)歳出を増やせるのか、インフレ率2%に達した後にどうするかも、より具体的に、そして失敗して大インフレになった場合にどうするのかも、最悪のケースとしては示すべきだ。進める側は絶対ないと思っていても(確信するのはどんな時にでも危険だ)、広く、政権交代のための信頼を勝ち取るためには、避けられない事だと思う。

国民が福祉について安心できるという前提で、消費税を上げるということも、排除まですべきではないと思う。左派政党主導で、彼らの推すプランを含め、複数の選択肢について、国民の参加も得て議論をし、アンケート(世論調査)をするのも良いと思う。関心のある人、不安、不満を持っている人をまずは引き付けるのだ。投票率を上げるのも重要だが、まずはそういった人々の間で話題になるような事をすれば、必ず広がっていくと思う。左派野党は、民主党政権の批判、一面だけを見ての批判を受けることこそ多いが、自民党と比べて話題になりにくい。だからこそ、重たい腰を上げさえすれば、まだまだできることはあるのだ。山本・れいわは、参議院1議席、選挙前の報道萎縮の中で、あれだけの話題を呼んだ。

ここまで色々と述べてきたが、筆者が不勉強を自覚していることを断っておきたい。もっと勉強し、自らの意見を固めたいと思っているところである。その点でも、例えば社保会(野田元総理の会派で新立憲の結成に参加)とれいわの議論を見てみたかった。

今からでも、消費税減税に反対の民主党系議員と、山本太郎に公開討論をして欲しい。「論破する」などという下らないものではなく、それぞれの問題点の有無や解決策、より良い方法を見出すための議論が見たい。それなしに5%への引き下げだけに限った合意をして、仮に政権を得ても、過去の繰り返しになる危険がある。つまりは、財源の問題でもめてしまい、消費税を再び引き上げることについて対立し、政権が動揺する(政権内で、れいわ+れいわに近い議員が少数であるとしても、引き上げることになれば、自らの落選を心配して、反対する議員がでてくる)。

与党経験による慎重さと、プライド、なお残る反自民最優先の傾向(良し悪しは別として)、この複雑な絡み合いをほどけるのは、山本太郎・れいわ新選組だと思う。民主党系とれいわはやはり、互いに補い合えると思う。

 

左派野党間ですら、協力できないのなら・・・→

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