日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
国民民主党

国民民主党

大政党には幅があって良いが、新たな国民民主党のような小さな政党は、皆が同じ方向を向いて突っ走っていかないと、力を発揮できない(それでも当然難しいのだが、注目、共感を得やすくなる)。しかし国民民主党は、一番重要だと言える経済政策について、内部で一致できていないように見える。玉木代表は、永続的なものではなくても、消費税の引き下げを唱えている。それが、党の、特に有力議員に共有されているように見えないのだ。支持基盤になっていると言える連合の右派(旧同盟系)も、大企業の経営者層と同様、消費税を上げて企業の負担を大きくしないという路線を、変えているようには見えない。

玉木代表は、自身の意見を浸透させようとしつつも、皆に気をつかっているようにも見えるし、これでは小党になった数少ないメリットさえ生かせない(追記:積極財政に転じたことは間違いなさそうだ2021年10月3日現在―)。国民民主党は、れいわ新選組にはない、次のような武器を持っている。

・民社党以来の歴史(国民民主党を民社党系と捉えない人もいるだろうし、筆者も民社党との連続性は、そこまで高くないと捉えている)

・民主党系というブランド力

・小党にしてはすごい支持基盤(まだどうなるか分からないが、旧同盟系の小さくない部分の支持を得られれば、そうだと言える)

・与党経験(政権運営を経験したと言える議員は少ないが、それでも)

 

こういった武器を持っているのだから、例えばれいわ新選組と同じことをすれば、れいわよりかなり大きな動きを、短期間で起こせるだろう(他党の変化を促すことも含めて)。しかし、旧同盟系が付いていては、消費税減税は無理だろうし、バックグラウンドがあるからこそ、無難にしておいたほうが、議席を増やせるという面もある(立憲と選挙協力をすることなどで、野党共闘の枠組みに事実上入っておけば、現職以外の候補が何人か当選する可能性も高まる。しかしその無難というのには、共産党批判も入っている。連合の右派がいまだに、反響にこだわっているからだ。共産党に擁立を控えてもらうことを期待しながら、立憲と共産の接近を批判するのは、本当は筋が通らないし、総選挙後に左派野党の枠組みを離れる事は、裏切り、事実上の公約違反でしかないが)。

それでも、守るほどの議席もないのだし、これらの武器を大事に抱えていては、話にならない。小党になったことを逆手にとって最優先の「武器」として、他の武器は使えるものは使い、使えないものはためらわずに捨てて、注目を浴びるような戦略を立て、大胆に進むべきだ。そのような戦い方をしても、左派野党の枠組みから、こぼれ落ちる事はないと思う。あくまでも左で戦うべきだと、筆者は思う。

玉木代表は熱心に発信しているが、党全体が一丸とならないと、「最大の武器」が武器にならず、ただの欠点で終わる。新しい国民民主党には、さわやかさと同時に、卑屈なところがあるように見える。分党前後の流れを見て、筆者がそう思い込んでいるだけかも知れないが、日本の政治の悪しき繰り返しの、非優位政党(野党)に関する部分では、取りこぼし(「合流するなら取りこぼすな」参照。国民民主党=民主党系再統一の取りこぼしである)。そして「近親憎悪」というのが、無視できない特徴である。

筆者が国民民主党に最も期待する事の一つは、左派野党全体を安全保障等について、現実的な路線に引っ張ることである(理想を捨てさせるのではない)。また、左派野党が陥りやすい独善にもブレーキをかけて欲しい。これらのことは、卑屈であっては絶対にできない。

最後にあえて言うが、国民民主党の展望が開ける事はないと、筆者は見ている。そのような材料がない。「時間をかけて」というのも、実際は非常に難しい。国民民主党は党勢の拡大を捨てて、立憲民主党の本当の意味での補完勢力に徹するべきだ。そうすれば、国民民主党の議員たちは、左派陣営で必ず重きをなすようになるはずだ。旧同盟系を支持基盤として確保できれば、そのための土台にもなる。あるいは、筆者は望まないし、正規雇用の立場を守ろうとする連合とは合わないが、維新の会と合流するのも一つだ(維新は雇用の流動性を唱えている)。

追記:なお、連合の右派は、労働組合でありながら、経営者層にかなり近いと言える。連合については、『新・政権論』「岐路に立つ連合」で、もう少し踏み込む。ただし筆者は労働組合については詳しくない。日本の労組の問題点については、木下武男著『労働組合とは何か』が、非常に分かりやすいと思う。

 

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