参議院が死ぬかも知れない

総選挙が終わったばかりだが、参院選まで約8カ月だ。今、舞い上がってもいる維新の会、国民民主党は、どんどん候補者を擁立する姿勢だ。共産党、れいわも、一方的に立憲民主党に尽くすわけにはいかない。複数区での候補者擁立を宣言している。

今回、意外と波乱のあった比例代表も注目はされるが、本来は1人区が勝敗を分けると言われている。ここは基本的には、立憲以外の左派野党は出さないだろう。左派野党を脱した国民民主党も、6年前に野党共闘の枠組みで当選している現職以外は擁立しないと思われる。ただし、維新の候補を推薦することは十分あり得る。そう、絶好調の維新は少しは擁立するだろう。大部分で擁立する可能性もある。そうなれば当然、自民党が圧倒的に有利になる。

自民党には公明党がついているのに、野党は少なくとも立憲と維新が擁立する。維新が自民党を削る面もある。しかし力で劣る野党は、無党派層の票を非常に多く得なければ勝てないものである(参院の1人区は、全体的には都市型ではないから、野党が支持を広げるのは大変だ)。ところがこの無党派層の票が、立憲と維新に割れる。選挙の時までに、どちらかが野党の中でかなり優勢になっても、多少は票が割れるから、大量の組織票を固める自民党には、やはり勝ちにくい。

なぜこんなことになるのか。それは比例票を稼ぐため、そして第2党(野党第1党)の地位を奪いたい、守りたいからである。それは分かる。しかし問題は、みんなが政権交代を事実上あきらめている事だ(参院選が政権選択の選挙ではないとしても、改選が全体の半数に過ぎないといっても、その参院の半数の議席が、6年間も固定される。次の衆院の総選挙で政権交代が実現しても、参議院は自公が過半数というのでは、政権運営がかなり難しくなる。やりたいことができない可能性が高い。自民党の議員の切り崩しが試みられることもあるだろうが、容易ではないし、本来やるべきことではない。。

現状は、民主主義国家としてはかなり恥ずかしい。どの党も政権など狙わず(立憲も満身創痍)、比例票を少しでも多く得るため、落ちる候補であってもどんどん立てて、足を引っ張り合う。複数区であっても、自民、公明の計2,あるいは自民党が2名で計3が指定席となり、残りの1、2議席(一部は3)に弱小政党が群がるのだ。本来は選挙協力など不要の複数区も、現状がこれではむしろ連携が必要だろう。

どの政党も政権獲得は狙わず、候補者を立てまくる。政権は狙わないが、第2党(野党第1党)の地位は狙う。野党のライバルは与党(自公)ではなく、他の野党なのだ。第2党になれば(第2党を維持すれば)、政権批判票がより多く入る。

1党優位の国では、志がこのように低くなってしまう事について、仕方のない面もあると言わざるを得ない、しかしこれでは参議院が死んでしまう。

本来良い事であるかは別として、せめて自公が過半数を割り、野党の一部の影響力が増せば、自民党がその分弱くなるという期待もある。しかしこのような状況では自民党の議席が減るとは考えにくい。そして万が一それが実現しても、野党同士対立していれば、どの野党が自民党の仲間にしてもらえるか、競争になるのが関の山だ。さすがに第2党はこれには加わらないと思ってしまうが、先例として自社連立(成立した状況は特殊だが、ここで例に挙げても問題はないと考える)、小沢新進党の、自民党との連立の模索がある。

いつでも総選挙があり(筆者はこれにも否定的だが-『政権交代論』「イギリスでも廃止! 総理大臣が勝てそうな時に衆議院を解散する権限」参照―)、政局になりやすい衆議院と違い、落ち着いて、より長期的な視点で審議するのが参議院であるはずだ。自民党が圧勝すれば、確かに安定するだろう。しかしそれは自公政権に服従するものとしてだ。衆議員とは異なる視点どころか、内閣と同じ視点ですべて認めるだけの第二院になる。自公が圧勝すれば、個々の与党議員の発言力も小さくなる。「お前が賛成しなくても、法案は余裕で通るんだ」で終了だ。

同時に筆者は、「もうそれでいい」と思うところもある。そこまでいかないと、野党も国民も、この国の、表面的なものよりも重要な、土台の欠陥に気づかないと思うからだ。しかし次のようにも思う。ここで述べたような未来となれば、今度はまた、「野党はもっと協力しないといけない」などと言うのだろうか。そしてその次にはまた、「安易に妥協してまで協力すべきではない」と、野党が勝てない選挙をを見て言う・・・。そんな事をこれからも繰り返すのであろうか。それなら今、仲良くするという事ではなく、互いにもっと向き合うべきではないだろうか。

今の野党はみな、あまりに幼稚だ。しかしだからといって、「付き合いをやめろ」ということにはならない。「大人の付き合いをしろ」となるのが普通だ。立憲も維新も、そうできない理由が多くあるのだとしても、それでもお互いを尊重しなければならない。筆者はこうしてまた、ずっと思ってきた事にぶつかっている。考えるのが空しくなって横に置いておいたものに、結局またぶつかっている。残念だが、当然のことだと気付かされたところだ。

参院選に関係する事なのでここで述べるが、京都市の財政が破綻しかかっている。2人区の京都府選挙区は、おそらく1つは公明党も票を献上する、自民党が取る。京都は共産党が強いから誤解されることも多いが、大阪も京都も、共産党以外のオール与党体制で財政が悪化したのである。自民党がこういった責任を取らされることは、不思議な事に、まずない。

問題なのは、2議席目である。衆議院議員の数では自民2、民主党系4(立憲2、国民1,無所属→有志の会1)だが、今回の躍進、その後の支持率を見る限り、維新が取る可能性はかなり高い。立憲民主党の福山幹事長(選挙の時には幹事長ではないだろうが)が落選の危機にあるのだ(政党支持だけを見ればかなり厳しいが、個人に投票する選挙区では、個人に対する評価、個人の知名度も当然影響する)。国民民主党が維新の候補に付くのか、4年前まではずっと同じ民主党系にあり、その中でも、前原、玉木と派閥を共にしていた福山を消極的にでも勝たせようとするのか。もちろんこのことも結果に影響し得る。

京都の例を挙げたのだから、最後に言っておかなければならない。立憲民主党は京都市の財政について、もっと向き合う必要がある。それは自民党との違いを見せる事にもなる。