日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
日本の国政選挙は、1強2弱の状況下での、結果の決まっている「人気投票」

日本の国政選挙は、1強2弱の状況下での、結果の決まっている「人気投票」

議院内閣制とは、本来(先進国では普通は)、明確な理念を持った複数の政党の存在を前提としている。例えばアメリカの共和党はどんな政党で、民主党はどんな政党か、世界中の人々が良く知っている。それは他の先進国でも同じだ。イギリスの保守党、労働党がそれぞれどんな政党かも、だいたいイメージできるだろう。

もちろんそれらは変化することがある。しかしそれは単なる人気取りや党内抗争の結果ではなく、時代の変化、大きな分かれ道にぶつかった時に起こっている。しょっちゅう変化しては、当然のことながら信頼を失ってしまう。

アメリカにおける共和党の誕生は、南北の産業構造の違いと、長年の溝が抜き差しならないものになっていたという背景があり、それと深い関わりのある奴隷制度の問題(新たな州において-黒人-奴隷制度を認めるか)を、直接の契機としている(『他国の政党、政党史』「アメリカ」参照。イギリスの例も分かりやすい-同「イギリス」参照ー)。

ところが日本はどうか、自民党はどんな政党かよく分からない。考えが異なる議員がいても良いのだが、それをたばねる土台が「反共」くらいしかない(しかし大阪、かつての自社連立を思い出せば、自らの地位を守るためなら、共産党とも組む事が十分に予想される)。小泉内閣期には新自由主義になったようにも見えたが、すぐに不明瞭になった(党首が代わることで自民党が明確に路線を変更をするということは、実はほとんどない。例外は小泉総裁誕生と、金融緩和に限ったことだが、安倍総裁返り咲きなど、わずかだ。池田総裁や中曽根総裁については、党の路線を変更したというよりも、比重を変えたに過ぎない。中曽根行革は自民党の支持基盤よりも、社会党のそれにダメージを与えるものであった)。

繰り返すが、全党員の考えが一致している必要は全くない。しかし一定の違いはあっても、だいたいこういう考えの政党なんだということが国民に分からなければ、選挙で選ぶことが難しくなる。自民党には競争重視の議員もいれば、ばらまきでやってきた議員もいる。伝統重視の議員が多い印象だが、それは安倍によるところが大きく、実際にはそうでない議員もかなりいると思われる。

自民党がこれでは、自民党に対抗しようとする野党も、姿勢を明確にしにくい。加えて、非自民の議員、候補をかき集めなければ勝てない点でもそうだ。自民党は何でもありで、それを批判されるどころか、権力を半永久的に握っている(ように見える)ことを利用して、「自民党に見捨てられると困る」という人々から票を集めている。政権交代とは何か、政権交代が定着する初期とはどのようなものか、ほとんど知らない人々から、票を集めている。

そのような武器がない野党は、右に寄れば左の票を少なからず失う、左に寄ればその反対で、身動きが取れない。自民党に依存せず、自民党に否定的な少数の票から、さらに取りこぼしが生じる。再編をしても、不参加者が出てくる(自民党に移りたい議員は、再編に対する国民の懐疑的な見方を利用する)。そして結局、1位しか当選しない小選挙区で、最強の自民党(自公共闘)、左派野党、右派野党が対決する、という1強2弱構図になるのだ。

「1強2弱」については、民主党政権が自滅したせいで生じたものだという見方もあるだろう。しかし民主党政権の自滅にも、1党優位が影響している。それに、民主党政権ができる前にも、【自民党vs新進党vs民主党】という、1強2弱の面がある構図があった。さらにさかのぼれば、自公民連携と社公民連携が交錯した55年体制後期も、1強2弱だと言える面がある(共産党・社共路線を入れて1強3弱とも捉えられる。いずれも時期による)。

野党には左から右まで、自民党よりカラーが明確な政党が並んでいることが多いが、その中で選んでも、そもそも政権は取れない。ほとんど何も得られない。それは第2位を決める、「人気投票」でしかないのだ。そしてその結果すら、社会党→民主党系という左派政党が2位と、相場は決まっているに近い。

安倍前総理個人の路線、それはつまり自民党の路線であったわけだが、それにすら矛盾はある。右翼的な志向が見て取れるのだが、同時に親米でもある。日本の右翼にはこのタイプが多い。そこにはアメリカに対する恐怖、コンプレックスもあるのだろうが、アメリカよりも、その対極にある社会主義を嫌っていることもある。しかしアメリカは、日本がかつての戦争を美化することも、韓国と対立することも許さない。安倍は時に勇ましいことを言うが、アメリカが許してくれる範囲で、吠えて見せているだけである。

日本も韓国も、目の前の相手ではなく、アメリカの顔を見ながら打つ手を決めているというのは、現状では仕方のないことなのだろうが、情けないとも感じる。

1党優位の歴史が長すぎて、自民か非自民になりがちである一方、自民党も小さな政党も対等に見て、好きな政党を選ぶ日本人は、今、維新の会の支持率上昇で試されている。

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