立憲民主党は第3党になる覚悟があるか

日本が五十五年体制に戻ったと言われることがある。しかしそれは違うと筆者は思う。社会党を立憲民主党、民社党を国民民主党と見ることは、なんとかできる。しかし維新は何党か。新自由クラブに当てはめるしかないが、自民党の離党者が生んだという点でこそ共通しているものの、誕生の経緯や歩みは違う。規模も手法も全く違う。

それに今は、両院とも1人区(小選挙)が中心だ。優位政党である自民党は余裕だとしても、第2党・野党第1党は、かつての社会党のような体たらくなら、すぐにその地位を追われるはずだ。小選挙区では弱い第2党・野党第1党は勝ちにくい。もちろん第1党に負けるわけだが、「第1党も第2党もどっちもどっちだ」というまぶしい新党が、第3極として現れて、第2党の地位をとりあえず得ようとする。だから10年も与党に勝てない第2党・野党第1党は、いつ国民に見限られてもおかしくない。そうなれば議席数がとても少なくなり、第3極の政党に抜かれる事になると思う。まず、第2党である間にも、支持率等でその地位の維持が難しいと判断されるようになれば、野党第1党である事で入っている票が、入らなくなるだろう。無党派層が一気に引く可能性が低くはない。

民主党系は、2012年の総選挙で壊滅的とも言える打撃を受けて、2014年の総選挙でも100議席にとおく及ばなかった。2017年には希望の党騒動のトリックで、民主党系(民進党系)の合計が120議席くらいになった。今回(2021年)の総選挙で、立憲は100議席に届かなかったが、民主党下野後の成績で言えば、健闘とし得る。民主党系の合計(立憲、国民、有志の会)では、110議席を超えている。これは総s年居の前とほとんど変わらない。

とは言え、衆議院の約4分の1の勢力に過ぎない。小選挙区制中心の選挙制度なら、第2党がこのレベルの議席になる事は、驚く事ではない。2021年が、4回目の敗けである点がやや特殊で、短い民主党政権の前も、自民党が勝ち続けていた事と合わせて考えると、異常だということだ。ただし2012年、2014年のように、第2党が12~15%程度であるのは、異常と言っても良いだろう。小選挙区制は、支持率の最も高い政党が、全議席を独占してもおかしくない制度である。しかし実際には、地域の特徴などによって、保守系、社民系の常勝選挙区が多くあるものだ(例えば工業地帯なら、労働組合を支持基盤にする社民系の常勝選挙区であることが多い)。日本の野党第1党には、その、常に勝てるレベルの選挙区が少なすぎる。ましてや比例代表もついている制度下での1割台は、弱すぎる。小さすぎる。

しかし維新も、実は弱い政党である。民主党系が政権失敗後に弱り過ぎているから、強く見えるだけである。良し悪しは別として、組織票も非常に少ない。

だから維新が立憲を抜くのも意外と難しい。まだ伸びしろはあると思うが、多くの選挙区に候補者を立てなければならない衆議院では、特に難しい(参議院なら、立憲が1人区をほとんど落とせば―かつての社会党、2013年の民主党で起こっているので、十分あり得る―、維新が立憲を抜くことはあまり難しくないだろう。複数区では渡り合えるし、比例区での逆転は2012年の総選挙ですでに起こっているし、2013年の参院選でもほぼ並んでいる。ただしこの時の維新は、今の維新よりも大きかった―『政権交代論』「維新の失敗」参照―)。

しかし衆議院では(参議院の1人区等でも)、立憲の選挙区に候補者を立て、共倒れに持ち込むことはできる。それによって、議席をさらに減らした立憲と何とか並ぶこと、うまくいけば抜くことが、実現し得る。しかし維新がこのような手法で、負けながらも、立憲にだけは(ギリギリ)勝つというのは、これまでの維新と同じく、自民党を助けることになる。

このままいくと、民主党は第3党に転落するかもしれない。今述べたように、選挙の結果そうなる危険がある。あるいは、共産党との関係の強弱でもめたりして、右派の議員が離党することもあり得る(今回の代表選で国民民主党出身の泉健太が選ばれたため、彼が共産党と距離を取り、左派、あるいは左派でなくても、共産党との明確な協力関係を求める議員が、離党する可能性の方が高くなった)。またまた分裂する事になれば、情けない事この上ないわけだが、筆者はさすがにもう、分裂はしないと見ている。旧立憲民主党も、旧国民民主党も、無所属になっていた議員達も、互いの違いを分かっていて合流したはずだ。それにそもそもは同じ民主党→民進党系だ。野党第1党を強くするという理念で合流したのなら、分裂は愚策だ。自分の選挙を考えて合流したのなら、自己責任だ。政治家の決断なのだから、当然だ。

今後またフラフラしても、支持は得られない(例えば松野頼久は、政権運営に苦しむ民主党を離党して維新の会に入り、その後継の維新の党を民主党に合流させ、それによって誕生した民進党をしかし事実上離れ、希望の党から出馬すると、小選挙区で大敗した。希望の党への参加は党の決定であったが、松野は積極的であった)。ただし第3極出身者に限っては、民主党系の関係者でもない筆者だが、申し訳ない気持ちもある。

それはさておき、第3党になった立憲はどうするか。これに関して、「第3極」になるという事について考えておきたい。保守2大政党+αの「+α」である第3極に、今度は左派勢力がなるということだ。第3党以下になっても第3極にならなければ、さすがに立憲は終わりだろう。自民か維新にぶら下がる小党として、吸収されずに、一定規模の政党として存続する事はないだろう(社民党残部のように、一部が数議席レベルで残るということ、左派の小政党間の再編はあり得るが、それはもはや、注目すべき政党ではない)。

第3極になるということは、「追及ばかりで支持できない」、「左に寄り過ぎている」などという声に迎合せず、自らの信じた道を進むという事だ。ただし、維新は非常に不安定な政党だし、これが2大政党の一方になるということは、信じられないような急成長を意味するから(民主党系の一部を吸収することがあるとしても)、より不安定になる。あるいは維新が政権を得て、さらに政権運営に成功した場合(可能性は非常に低いが)、万年与党としてしか生きられない自民党はかなり弱る。そうなれば左派勢力が影響力を持つような再編、あるいは2大政党の一方への復帰もあり得ない事ではない。魅力ある左派政党として、議席が減っても踏ん張ることができれば。

ちなみに筆者は、「追及ばかりだ」という批判はしていない。実際にはそこまで「批判、追及ばかりではないし、権力を監視するのは野党の重要な役割だと思うからだ。ただ、共感を得にくい表現、スタイルは改めるべきだ。それは維新の民主党系への批判についても思う事だ。維新もいずれ、国民に見透かされると思う。民主党政権期の自民党だって、民主党~立憲民主党と変わらない野党だったと思う。プラカードも実は使っていた。

維新の会については次章で述べるが、維新は第2党に浮上した時、これまでとは違う、これまでの第2党の苦労を思い知るはずだ。このような未来を良いとは思わないが、興味はある。これまで民主党系を批判してきた維新が、そこで悩む姿を見てみたくはある。

話がそれてしまった。立憲が、国会中継等を見た国民がに鋭さを感じさせつつ、嫌悪感よりも共感を覚えてもらえるようなスタイルを見出すことは大切だと思う。左に寄り過ぎだという事について、経済政策を見ればそこまでではないし(だかられいわが支持を広げている)、国防・外交については、確かにもっと現実的になるべきだと考える。

しかし、政党は国民を啓蒙するのも役割の一つだ。自分の主張を貫いて、それでも国民が変わらなかった場合、国民にあまり評価されず、第3党以下に転落する事を受け入れる。それも潔くて良いと思う。すでに社民党がそうであったという事は言えるが、社民党についてはさすがに内向き過ぎるし、きれい事で片付けすぎるところがあると思う(それにしてはよくく、立憲の会派にとどまっている。この点は評価したい)。それに社民党がここまで小さくなった背景には、その多くが離党して民主党を結成、民主党に移動したこともある。

社民党の多くを吸収し、社民党の残部を会派に加えている立憲が、社民党ほど弱くない左派政党として、第3極になる事はできるのではないだろうか。

それでも、公明党以下になることは考えられる(特に複数区で公明党に負ける場合、参議院では)。地方の選挙を含めた集票力を見れば、それは大いにあり得る。野党第1党というブランド力を失ったらどうなるか、左派政党として一定の需要があるか、共産党やれいわと競合して小党に転落するか、左派野党との共闘で少しは踏ん張れるか、その過程で分裂するか、筆者には正直想像がつかない。だが、第1極も第2極もだめだという空気には容易になる。左派的な志向の国民もずっといる(高齢化で減るだろうが、若者が全く左派的にならないということはない)。それに衆参両院とも、比例代表がついている。参議院には定数4以上の選挙区もいくつかある。全体的には小党に不利でも、その息の根を止める制度ではない。有力な第3極になる可能性はある。ここでもれいわ新選組がカギになるだろう。腹を決めた立憲なら、野党共闘が輝くかも知れない。

第3極になる場合、キャスティングボートを利用して、議席数以上の影響力を持つこともあるかもしれない。それは悪い事ではないと、筆者は思う。ただし、もし「自民か維新」かという、政権選択の選挙が実現した場合には、仮に自民党の方に近かったとしても、政権交代を阻むことはしないで欲しいと思う。政権交代が無いに等しいというのが、日本の一番深刻な問題だと思うからだ。また、国防については理想を唱えつつも、与党の現実的な判断を、否定しまくったり、足を引っ張ったりは、して欲しくないと思う(そんな事はしないと思うが)。

ところで考えてみれば、立憲民主党は衆議院15議席(選挙前の、前議員の数)、参議院1議席で始まった。枝野はここから草の根で、徐々に党を強くしていこうとしていた。今考えると、その方が幸せであったかも知れない。自民党と希望の党という、保守2大政党制に満足できない人々の支持を得て、もしかしたら山本太郎とも協力して、格差拡大の阻止、弱者救済を訴える、「正義の政党」として、のびのび自己主張、自民党の追及をしていたかも知れない。それが無党派層の共感を呼んでいたかもしれない。

ところが立憲は、総選挙で55議席となり、希望の党を5議席上回る、「歴史上、最小・最弱の野党第1党」というつらいポジションについた(本当に「最」を付けて良いのか、確認はしていない。いずれしてみたいが、選挙の結果、というわけではないが、立憲より議席が少ない、比較的新しい例が実はある。それは結成から1年余りが経った頃の民主党だ。同党は新進党の解散によって、わずか52議席で第2党-立憲と同じような境遇-になったが、数カ月後には再編によって、大政党になった)。躍進したのは嬉しい事だとしても、これには同情もする。しかしそうなった以上は政権交代を実現させる責任が当然ある。

日本の様々な問題が、国民が選択しない(できない)1党優位にあると考える筆者は、野党第1党の立憲民主党に期待をした。希望の党は小池都知事の野心で動く政党であり、中身がないと、否定的に見ていた。筆者は保守2大政党制には否定的だが、どうしても保守2大政党制になるのなら、自民党のライバルは希望の党よりも維新の会が良いと思っていた。

話が少しそれてしまったが、立憲はもともと小党であったのだから、自ら第3党になる必要はもちろんないとしても、本当に理念を大事にし、主張を貫いた結果、第3党以下になるのなら、そこから出直すことも悪くないと思うのだ。

ただし、「維新の問題点、矛盾が噴き出すまで、第3党になっても辛抱しよう」というだけでは問題だし、続かないと思う。左派色が明確なまま第3党以下になれば、維新の代わりになるものとしては、評価されにくい。想像しやすい例を挙げれば、「自民も維新も格差(中間層の溶解)、貧困を深刻にする」という認識が広がってからの再浮上があり得る。つまり、より長期間、左派(社民系)の中規模政党としてたえなければならない。

左派色を薄めて第3党以下になれば、存在意義まで失うことになるので、展望は長期的にも開けないと思う。そんな政党が求められる日は来ないだろう。来るとしても、すでに小党から再出発している国民民主党に、その道の優先権が与えられるだろう。筆者はこの道は立憲にとって最悪だと思う。ちなみに国民民主党にとっても良いとは思わない。国民民主党に関しては改めて述べる。

 

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