日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
2つの維新

2つの維新

維新の会の、これまでの離合集散を確認しておきたい。まず、日本維新の会は2012年、地域政党として結成されていた大阪維新の会の、国政版として結成された。大阪維新の会は自民党の分派であったが、日本維新の会に参加した自民党議員は、大阪府内に選挙区があった2名に留まった。当時は民主党政権の末期であり、大阪では維新が躍進するとしても、大阪以外では、自民党が大勝すると見られていたからだろう。このため日本維新の会は、主に民主党離党者、みんなの党離党者によって結成された。

この、大阪維新が独自に集めた議員の数では、衆議員10議席未満の政党であったが、総選挙の直前、太陽の党(たちあがれ日本から改称)が合流した。これは橋下大阪市長(当時)が、維新原東京都知事(辞職して総選挙に出馬)の手腕を高く評価していたことによる。石原慎太郎は右翼的な政治家として知られるが、都知事としては複式簿記・発生主義の採用、排ガス規制等の環境対策に取り組む、改革派の知事でもあった。しかしその他の太陽の党の多くは、橋下らとは合わなかった(ただし、当時は比例選出、以前は兵庫県選出であった片山虎之助参議院議員は、ずっと行動を共にすることとなる)。また橋下と石原も当初、脱原発では一致できていなかった。

脱原発を唱えていた橋下が、その後軟化した。日本が脱原発をリードするという維新本来の主張は、2030年代までにフェードアウトという、控えめな公約になった。しかし、当時、日本維新の会の単独の代表であった石原は、2012年の総選挙の後、その公約を知らなかったとした。

これについてはさらなる内紛があった。原発輸出のためのトルコ等との原子力協定について、石原が代表であるにもかかわらず、党の決定に反して賛成しようとしたのだ。1年生議員(当選前は世襲の府議会議員)に「出て行け」と言われる映像は衝撃的だった。結局石原は、反対を表明したものの、打撲を理由に採決を欠席した。

維新の会大阪派は、みんなの党、そして民主党の保守系との、合流を策した。だがみんなの党とは、総選挙前に主導権争いのようなものをしており、選挙協力を進めて、選挙で維新が野党第1党になるチャンス、総選挙後に合流するか統一会派を組んで、野党第1党、せめて野党第1会派となるチャンスを自ら逃していた。

選挙後の再編で野党第1党の地位を奪うのが民意に反するかどうか。これについては両論あると思う。決して良い事ではないが、非常に近い政党同士ならば、そのような事をしても仕方がないと、筆者は思う。当時は、上で述べたどれもが、余裕で実現する状況であった(ただし総選挙で野党第1党となることについては、民主党があそこまで議席を減らす事は予想されていなかったから、事前に容易な事だと知るのは難しかった。それでも、一つの可能性としてなら、想定できないものではなかった)。

ところが、民主党は簡単には分裂せず、代表選で、保守系が勝利する事もなく、民主党は自民党の右傾化を前に、左傾化(先祖返り)していった。みんなの党からは、左派ともし得る江田らが離党して、結いの党を結成した。維新の会は結いの党との合流に動いたが、これに反発する石原系(太陽の党系)が離脱(手続き上は分党)、次世代の党を結成した。ここには、たち日→太陽が擁立し、比例で当選した議員等も参加した。石原慎太郎にもまだ一定の人気があったとはいえ、(どちらかと言えば)橋下人気で当選した議員が多かったから、同党は総選挙で、19から2議席になるという、惨敗を喫した。

この維新分裂のため、維新の会と結いの党が合流した維新の党は、野党第1党にはなれなかった。この合流、そして2014年の総選挙で民主党の落選者を多く当選させた事、さらに、大阪派が、大阪都構想に集中することにしたため、維新の党の主導権は、民主党(結成当初の維新の会に参加した議員を含む)と結いの党の出身者が握り、大阪派は離党、除名に追い込まれた。こうして大阪派がおおさか維新の会を結成し、さらに日本維新の会に改称。維新の党自体は、民主党に合流して、民進党となった。

今、国会には2つの維新が存在する。自民党に対抗するために、他の野党との合流を選択した立憲民主党内の維新系(非大阪派)、そして、自民党寄り・純化を選択した、日本維新の会(大阪派)である。前者は後者に「ニセ維新」と呼ばれた。前者が本家であるのは当然だ。しかしこれも当然の事ながら、いつも本家が正しいとは限らない。政権交代の定着を何よりも重要だと考える筆者は、前者を支持する。だが今は、後者に勢いがあり、その説得力が増している。引き続き注視したい。

これだけの再編を繰り返し、結局純化を選んだのが、今の日本維新の会であるから、立憲民主党等との合流に進む可能性は極めて低い(「国民民主党となら、」とも思うが、雇用の流動化を唱える維新に、連合がついて行けるだろうか(立憲の脱原発には批判的であっても、脱原発を唱えて見せる小池都知事は支持するのだから、保守なら良いということかもしれないが。

しかし大阪の勢力が主導権を握る政党だから、他党と合流せずに拡大した場合にも、大阪以外で選ばれた国会、地方の議員が不満を持つということは、つまり狭義の大阪派と、それ以外との対立が再現される事は、あり得なくはない(今のところはまだ、維新の会全体を、広義の大阪派だと言えるわけだが)。順境の維新しか知らない議員が今後、動揺する事だってあり得る。

 

小沢系と維新の会の共通点→

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