日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
連合の解体的な再編が必要

連合の解体的な再編が必要

日本の労組の組織率は高いとは言えず、さらに下がり続けている(2020年は少し上がったようだが、終戦後に50%を大きく超えたのが、今では17%前後だ)。そして連合は、労働者全体ではなく、役所、大企業に勤める正規雇用の被用者の立場、待遇だけは守る組織だと、少なくない人々に思われている。

筆者は、連合も終わりが近いと感じる。内部で一致できない点、受け入れ難い点を、知恵として曖昧にすることもせず(する事をやめてしまい)、しかし分裂もしない。その先には衰退しかないと思うのだ。

そんな連合が生き残るには、正規も非正規も、共に弱い被用者として守るような組織になると共に、これからの時代に合わせた、働き方等に応じた緩い連帯を形成し、それらをまとめ上げ、被用者の、強い集まりになるしかないと思う。従順な企業別労組として経営者にいいようにされないよう、その企業別組合の単なる集会ではない、産業全体、地域全体の労組をつくるべきだという考えがある。欧米の組合は現に産業別のものとして発展しているし、それは当然なのだが、もはや非常に難しい。それならまだ、同じような境遇(雇用形態)にある被用者を一気にまとめる方が実現しやすいのではないかと、素人だが思うのである。

もう少し具体的に言えば、正社員(正規雇用)、派遣社員、契約社員、パートタイマーなどという、雇用形態ごとの労働組合をしっかりとつくり、それぞれの立場を、支持政党、政府(支持政党が野党である場合にも)に伝える。またこの雇用形態ごとの労組をまとめる形で、連合を再建する。そこでは、それぞれの被用者の利益だけでなく、不利な雇用形態を強要されない国(あるいはそのような雇用形態になってしまうことについてはあきらめ、その形態でも、十分な待遇を受けられるようにする国)を目指して活動する。雇用の変化にも影響を与えたり、対応したりする。業種ごとの差異は、各雇用形態の組合の連合体(今の連合に当たるナショナルセンター)において調整する。

とはいっても自分の属する企業、業界の今後が心配だというのは分かる。所属する企業、業界の趨勢の方が、生活に影響するという事は確かにある。それは非正規雇用にとっても同じであり得る。政府の産業政策に影響を及ぼしたいと考えるのは理解できる。経営者と共に、取引先の企業と交渉する必要が、特に弱い立場の企業にはあるだろう。

業種ごとの差異は、労働問題に直接的にではなく、間接的に関わっていると言える(間接的だから影響力が小さいという意味ではもちろんない)。それについては、労組とは別の組織をつくるべきだろう。もう少し具体的に言うと、産業ごと、業種ごとの、参加を希望する被用者を中心とした、研究・提言機関の集合体が、連合と重なるように存在する形にすべきだと考える。共産党系、共産党寄りの労組とは、どの点で一致できて、どの点で一致できないか、そしてどこまで協力するか、協議をする。

全労連(共産党系・共産党寄り)、全労協(社民党系・社民党寄り)が解散し、その組合の組合員が個々に、あるいは雇用形態ごとにまとまってから、再編された連合(連合に代わるナショナルセンター)に合流するのも良いと思う。連合よりもずっと小さく、経営者寄りではないと言える全労連、全労協を残し、それが連合(新たな連合)に加盟するのも良いと思う。後者は、再編が効果を発揮しない場合、経営者側に介入、懐柔された場合の、保険にもなり得る。

連合が立国両党の合流を求めているのは、建て前的な面を別とすれば、国民民主から立つ、組織内候補の当選に不安があるからだろう。合流さえ実現すれば、連合は、自民党に寄る事で、合流新党を脅すこともできるし、左派を排除してでも共産党との共闘をやめさせるなど、合流新党(国民民主を立憲が吸収するなら、立憲民主党)を、コントロールできると考えているのだろう。

しかし事はそう簡単でない。連合が自民党の陣営(政官財の癒着構造)の中で、「野党第1党の最大の支持基盤」という背景なしに重宝されることはないと、左派に足元を見られれば、その展望は閉ざされる。連合も既得権として悪者にされやすい状況である事を、忘れてはいけない(追い込まれた立憲が、一か八か、脱連合を打ち出す可能性、それをそれでも一部の労組が支える可能性はあると思う)。

立国両民主党が合流した後では、今回(2021年)の総選挙のように、立憲を減らして国民を増やす、などという事はできない(意図していたとまでは言わないが)。合流新党の議席をあまり減らさずに、左派だけを分けて、懲らしめることはできないだろう(左派の数名をターゲットにする事はできても、それをすれば合流新党がまたゴタゴタし、マイナスになるだろう)。「共産と協力するなら応援しない」と言って、合流新党(国民を吸収した立憲)の議席が減れば、連合の影響力も弱まってしまう(今回の総選挙ですら、立憲を懲らしめる事こそできたが、連合も批判を受けたり、内部の統一性がさらに弱まったりしている。

この、立憲との合流を求める以外に、連合右派の、比例組織内候補を当選させる方法が、小池系との接近である。小池人気がある程度再燃する、再燃させられるという事が前提になるが、それが実現するなら、連合の右派は、連合内の対立に悩まされず、また、立憲、連合双方の左派を弱らせるために労力を使わず、ただバッサリ切り捨ててもなお、野党第1党の支持基盤の地位を維持できる。

小池系との事についてはすでにふれたが、次節で少し補足したい。

 

小池百合子を愛する連合→

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