1-03歴史上一度だけの政権交代1.政権交代論

議会ができて120年、一度だけしか政権交代をしたことがない日本

国会(戦前の名称は帝国議会)、それを構成する二院の一方である衆議院ができてから130年近くが経っている。それだけの年月の間、日本はまともな政権交代をほとんど経験していない。だから、外圧を受けて国の制度が大きく変わった幕末~明治、敗戦を受けて国の制度が再び大きく変わった第2次世界大戦後、それぞれのスタートダッシュは成功しても、それが一段落した時に自力で有効な改革を行うことができず、低迷を長引かせてきた(後者は現在進行形だ)。

そんなはずはないと言う人もいるだろう。確かに、まともでない政権交代なら、特に戦前には少なからず経験している。

「まとも」とは何か。それはもっともなことである。筆者が「まともな政権交代」とするのは、有権者の投票によって政権が変わる場合である。多少の見方の違いはあっても、大まかには同意していただけるのではないだろうか。何せ、その時々の国政について有権者の賛否を問う、あるいは次に政権を任せたい政党等を選ぶのが国政選挙である。

このような条件をつけると、政権交代は約130年の間、2回、多く数えても3回しかなかったことになる。それどころか実は、筆者は1回だけであったと捉えている。

それは一度置いておいて、次のようなことを考えることがある。戦前にも政権交代はそれなりにあり、戦後まもなく社会党中心の内閣があり、冷戦終了後は、細川政権や民主党政権があって、それらが全部失敗したのだから、政権交代が否定されても仕方がないのではないか。同様の考えを、実際よく聞く。しかしまともな、つまり国民が自ら政権を取り替えたという意味での政権交代は、明治、大正、昭和、平成、全て合わせて一度だけ、2009年に民主党政権を誕生させた一度だけなのだ。たった一度、先進国の中で圧倒的に遅い、つい最近の、たった一度だけなのだ。これは単なる経験不足である。そのために、民主制の肝ともいえる大切な手段を、放棄するようなことがあって良いのだろうか。

戦後は政権交代をあまり経験しておらず、特に国民自らの手では議会開設以来ほとんどしていないのだから、それが失敗したから自民党政権しかないというのは、初めて補助輪なしで自転車に乗って、一度転んだだけで、もうダメだと言っているようなものなのだ。それではいつまで経っても乗れるようにはならない。つまり、いつまでたっても政権を自ら選ぶことはできないのだ。何度も転んでは立ち上がり、自転車に乗れるようになったことを思い出して欲しい。

「私は政権交代という手段を放棄したわけではない」という人もいるだろうし、政権交代が一度だけだとする筆者の見解に違和感を持つ人もいるかも知れない。前者については、放棄していないつもりであっても、まともに行使できなくなる危険性がる。これについては改めて述べるとして、まずは後者について確認する。

さきほどまともな政権交代が多くて3回だとしたが、それは次の3回である。

・1947年4月の第23回総選挙:第3党から第1党となった社会党が総理大臣を出す、片山内閣が誕生した。

・2009年9月の第45回総選挙:民主党が第2党から過半数を上回る第1党となり、政権を獲得した。

・2012年12月の第46回総選挙:自民党が第2党から過半数を上回る第1党となり、政権を奪還した。

国民が自ら政権を交代させたのが1度だけだというのは、決して誇張ではない。さきほど日本では、国会が設けられてから、総選挙で第1党が入れ替わることで起こった政権交代、つまり国民が自ら起こしたといえる政権交代は、130年近い歴史の中で、2回しかなかった。第23回総選挙後の政権交代は、後述するが、有権者が政権を選択したと言い難い面があるのだ。そして筆者は第46回総選挙後の政権交代も除外する。なぜなら、2009年の政権交代からたった3年3ヶ月で、54年間ほとんど休みなく続いた自民党政権(61年間全くといっていいほど休みなく続いた保守政権)に戻っただけだからだ(このことに関して条件を決めることは、少なくとも今はしない。しかしちょっと、仮にやってみたい。民主党政権が2期―総選挙で2回勝利-以上続くくらいであれば、その次は20年近く自民党政権が続いても、戻りを本格的な政権交代とし得るだろう。しかし民主党政権が1期で終わる場合、次に自民党政権が2期より長く続くのでは、戻りを本格的な政権交代とはしにくい。いずれにせよ、自民党が下野する本格的政権交代が、20年以内―自民党が野党である期間が10年近くに及べば、もっと長くても良いが―に再度起こる、つまり繰り返されるようでなければ、話にならない。もしも自民党の下野が堅調に繰り返されるなら、上の条件は緩めることも十分できるだろう)。

約130年間でたった1回(多く数えても3回)の、有権者の判断による政権交代・・・。あるいは多く数えてもたった3回の、そのような政権交代・・・。独裁国家ならいざ知らず、こんな国は他にはない(他国との比較は、改めて行う)。