日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
小党達は・・・

小党達は・・・

一つ前の2019年の参院選で話題となったのが、れいわ新選組、NHKから国民を守る党の議席獲得である。何十年ぶりかのミニ政党ブームかとも思われた(『続・政権交代論』「れいわ新選組と、NHKから国民を守る党について」参照)。その主役とも言えるれいわは順調に議席を伸ばした。前回は比例のみで2議席。今回は、衆院選で比例東京ブロックから当選していた山本代表が、東京都選挙区で当選し、比例は再び2議席を獲得。合計で前回より1多い3議席を獲得した。同党の参議院の議席は合計で5議席になった。衆議員にも3議席を有する。

山本代表の6位での当選は低いようにも見えるが、衆院選より投票率が低く、組織票が強みとなる選挙で、結党から3年を経ても当選できるのは、少なくとも悪くはない結果だと思う(維新ですら、比例では立憲を上回っていたのに7位で落選だ。知名度の高い無所属の乙武洋匡は9位で落選だ)。

山本太郎が衆議院の議席を捨てて参院選に立候補した事には批判もあった。しかし山本の衆議院(総選挙)での当選は、れいわの党名が書かれた比例票によるものであり(小選挙区との重複立候補ですらなかった)、れいわは山本が代表である点を含めて変わっておらず、議席もれいわの名簿からの繰り上げで守られるものであったから、これは問題ないと筆者は思う。

れいわのその後については改めて述べるが、代表選は非常に良いものになったと思う。しかし一方で、2023年頃から、他の左派野党との関係が必要以上に悪化し、同党の行動にも、状況を踏まえてもなお行き過ぎと言わざるを得ないものが増えたように感じられる。コストプッシュ型とは言え、インフレの傾向がでてくる中で、従来の同党の政策で良いのかという問題もある。

N国党(党名変更が多すぎてややこしいので、今後もこう呼んでいく)は3年前のような支持を失っているように見えた。飽きもあるし、後述する、参政党の影響もあるのだろう(政策が重なっているというより、小党である事と、ネットの活用による親近感、議席獲得に届き得る勢いがある事による、支持する事の充足感を生む点で重なる)。浜田議員は右翼的な有権者にも共感を得ることができ、一部で支持を得ているが、そもそも右翼的な政党が成功した試しはなく、またN国党が政策の実現以上に(そもそも1議席レベルでは独自の政策の実現はほぼ不可能だと言えるのだが、そうは思わない支持者もいるようだ)、その未熟さ、奇をてらった戦略(ミニ政党が協力する「諸派党構想」は面白い構想だとは思うが)が前面に出たためだろう。個性的な政党ではあるが、それで3年もの間、関心を引き付けているのは難しい。

なお、政策実現は困難だとしたが、N国党は注目される事により、NHKに関する問題を浮き彫りにして、それによって近い問題意識を持つ大政党の議員の発信を、間接的に助けている。それによって空気を変える事にはある程度成功している(NHKの報道に不満を持つ国民、議員が左右双方にいる事もプラスに働いている)。しかし政治に関心がない(なかった)人々にも支持されているからこそ、短期での公約の達成を求められてしまうところもある。

それでもN国党が1議席を得られるのみならず、公職選挙法上の政党要件を満たしたのは、ネットでの暴露が話題となっていたガーシーを公認したからだ(候補者名での投票も、同党の比例候補の中で最も多く、ガーシーは当選をした)。ガーシーは芸能人へのアテンドをしており、芸能人の名を無断で利用する詐欺行為もしていた。告発により逮捕される可能性が出てくる中、自分と距離を取った芸能人に腹を立て、暴露を始めた人物だ。暴露は芸能人に限らず、実業家、政治家に及んだ。政界の、それも権力を持つ人物の裏面を暴くのであれば、まだ有意義であった(もちろん自らの記憶とは別の根拠を示すか、他から信用に足る証言等を得るか、調べる事で、ある程度信ぴょう性が増すようなものでなければならないが)。しかしそれでも、参議院議,員の仕事と言えるかどうかは微妙である。政策等についての何らかの知識・主張があった上で、疑惑を追及するのでなければならないだろう。そうでないのなら、私人としてN国党かどこかの議員に、情報提供をすれば良いという事になる。

しかもガーシーには以前より、敵と味方を選別する傾向があった。ガーシーが「悪」だとした、あるいは恨みがある人物だけをたたくというのでは、あまりに独善的だ。ここに悪しきポピュリズムとの類似性がある。

ポピュリズムとは敵を設定するものである。筆者の考えでは、あくまでも権力等を持つ者を敵と設定し、かつ過度な攻撃を加えるのでなければ、悪しきポピュリズムではない。民主主義国でありながら実際には民主的でない国(政権交代が定着していない日本にはその面があると考える)では強い権力と戦わない限り、何もしっかりとは変えることができない。だから筆者は、N国党の幹事長に就いたつばさの党の黒川敦彦の、安倍元総理への批判自体には拒否感を覚えなかった(討論をする番組内で批判の歌を歌うというのは反則で、品位がないとも言える。しかし筆者はどちらかというと、オロオロするばかりの司会者に嫌悪感を抱いた。報道ステーションの大越キャスターも、立花党首に対してやや似たような様子に見えたが、発言が問題だと思うなら、もっと毅然として、つまりリスクを引き受けて批判をすべきだ。それもできないのなら、そんな大役は降りた方が良い。この点では田原総一朗を見習ってほしい)。

話がそれたが、ポピュリズム政党だって政党なのだから、政権の中心を担う可能性が、理屈の上ではある。その時には、自分より明確に強い敵は基本的に存在はない(もちろん例外はあるが、それでも本来、全くどうにもならないという事はないはずだ)。同時に、政権党とは常に批判される存在でもある。その時悪しきポピュリズム政党は、自分達を批判してくる、権力者ではない国民を、攻撃対象とする。そのような怖さを、筆者はガーシーからも、彼をコントロールする意思がないわけではなくても、党勢の維持・拡大に利用する意図があり、彼を恐れているというような発言をしていた立花党首にも感じた(立花にはそもそも以前から危うさを感じていた)。

政治に品位が失われると、タガが外れて弾圧や差別を招く。この事も忘れてはいけないと思う。

N国党についてはもうあまり述べるつもりがないので、ここで補足しておきたい。ガーシーは逮捕を恐れてドバイに逃げており、帰国しないまま当選し、議会に全く出席しない事を理由に、一度も帰国しないまま参議院を除名された(N国党以外に反対はなかった)。筆者は1党優位の日本においては特に、このような除名には反対である。権力が弾圧をする時に前例として悪用される危険があるからだ。もう少し手前の処分でも意思表示にはなるし、ガーシーは全国区の比例代表で選ばれたのだし、彼の議席はN国党に役立っており(ガーシーの棄権が法案の成否に影響しないというのは言い訳にならないが、質問時間の確保等では彼の議席の分が活きる)、同党の支持者もそれで納得していたのだろう。同党の支持者でもないが、面白そうだからガーシーに投票したという有権者も、困る事はないだろうし、議会には出席して欲しいと言ったところで、議会に出席した上での働きを期待すべき人物でないのは、参院選の時点で分からなければいけないとしか言えない。

党の創設者でもある立花孝志は、ガーシーを帰国させられなかった責任を取って党首を辞任、大津綾香(子役時代、NHKの週刊こどもニュースに父親を演じる池上彰の娘という設定で出演していた)を後任に就けた。しかし2023年4月、大津を除名したと発表した。大津はこれを認めずに、党首の地位(とそれに付随する資金に関する事など)をかけた内輪もめが始まった。筆者がN国党を「尖った維新」と捉えている事が正しいと証明してくれるかのように、創立者の立花らと現当主の大津ら、どちらが正当かで、もめたわけである(維新の党は、執行部と大阪派で正当性―代表・資金管理―を巡る争いになった―一応は円満な分党で決着し、前者が存続して民主党に合流、後者が今の日本維新の会を結成した―)。

しかし、N国党は維新と違い、国会に数十議席を持つような政党ではないし、N国党の内輪もめをここで問題にする必要はないと考える。ただただ、魅力的に見える小党に投票するよりも、野党第1党を強くするのが早いのだと、述べておきたい。

さて、魅力的に見えるミニ政党と言えば参政党だ。同党の街頭演説が盛り上がりを見せ、比例代表で1議席を得た事は、れいわとN国党が再度議席を獲得した事と共に、ミニ政党ブームが続いているように感じさせた。

参政党は右翼的な政党だ。筆者の分類ではネトウヨの政党だと捉えそうになる(筆者は右翼的であり、かつ妄信的、独善的である人々をネトウヨとしている)。しかしずれがあり、それこそが同党の特徴だと言える。同党は支持できる政党が無いから自分達でつくるという企画から誕生した。現代表(2023年8月~)の神谷宗幣の他、youtuberから保守言論界の仲間入りをしたKAZUYAも、ボードメンバーとされる5人の中心人物の一人だった。KAZUYAは、トランプ大統領が選挙結果の操作によって落選したとする主張、右翼的な青山繫晴自民党参議院議員の、手から金粉が出るという話などを批判した。つまりややソフトなネトウヨだとも言える。参政党はこのような層を狙っていたように見える。自分をネトウヨとは思わない、思いたくない右翼(というより反左翼・反中道左派)の人々がターゲットになっていたように感じる。しかし、まさにそのトランプ大統領の件で、陰謀論に否定的なボードメンバーが抜ける形となった(結局5人の中では、間に入るような形となっていた神谷一人が、残る形になったようだ)。それを埋めたのが、テレビ出演による知名度のあった武田邦彦氏らであった。そこから参政党は、陰謀論に傾きつつも(ネトウヨの一部~多くに好かれたトランプの落選云々だけではなく、そこから世界を裏で操る勢力という話になると、左にウイングが広がる―あくまでも陰謀論を信じる一部の人々の中での、左だが―)、反食品添加物も含むという点で左派も包摂し得る、「ソフト」な右翼政党となった。

ネトウヨとか陰謀論者とかナチュラリストとか、小さなトレンドを何でもありで取り込む政党を、一般のポピュリズム政党に分類して良いものかとも思う。その中に生じ得る矛盾(左右双方の党員)を覆うのが神谷らの個人的な人気なのだとしたら、特殊な、あるいは新種のポピュリズムとでもすべきかも知れないが。筆者がいくつか見た、創設者と言える神谷氏の演説には悲壮感があった。そこには危うさを感じたから、危険なポピュリズム政党だという捉え方も排除はできない。

神谷氏は結党のずっと以前から、自らが立ち上げたYouTubeチャンネルに右寄りのゲストを呼んで話を聞いてきた。筆者はそれらの動画も少なからず見てきたが、もともとは特に知識のない、なんとなく保守(実際には右翼)を良いものと感じている人物が、それゆえにゲスト達に無防備に染められていくように見えた。その中に陰謀論もオーガニックもあったという事だろう。同党の党員集めは、紹介者数で党員をランク分けする点などで、ネットワークビジネスのようであった。そこに実際にネットワークビジネスをしている人も関わっているようで、危うさを感じる。

一般の右翼(政党)、悪しきポピュリズム、敵意が激しいN国党のような危険は感じないが、参政党が大きな話題になっている(ように見える)日本の状況も、あまり健全ではなく、そこに危険な勢力、人物が付け入る隙があるとは感じる(似たような懸念、変化は多くの国であるのだろうが)。幸いな事に、議席を持たないが(一部に)ある程度注目されるものも含めて、ミニ政党が最近は数多く出現し(2023年にはついに百田氏も独自の右翼政党を結成している)、まとまった脅威にまではなっていない。それらが大同団結すれば欧州のポピュリズム政党のようになる可能性はあるが、日本と欧州では(まだ)事情が異なり、また小さな違いや感情的な対立でまとまれないのがこういった勢力である。過去のミニ政党に見られたように自民党入りをしても、それこそ影響はほとんどない。

しかしそれにしても参政党の党員のSNSには驚かされた。各党の支持基盤等をあげつらい、参政党のバックは国民だと言う。自分達だけが正当だと言う点で、これは立派な、悪しきポピュリズムの芽である。

反ワクチンや地球温暖化への異論自体には全く問題はないと思う。陰謀論だって、物事を疑うこと、警戒すること自体は良い事だ。色々な考えが示されるのは大切な事だと思う(もちろんある多少の根拠はなければいけないが)。問題はそこにドラマチックな表現が乗って、自分達の考えが絶対正しいと思うようになること(これは多数派についても同様だ)、そして何より党首や自分達に酔うことである。政党がそのようになり、人々を「洗脳」すれば危険だ。参政党にはそのような危うさがあると感じる。例えば地球温暖化は疑っても、地球温暖化が誤りだという説については、疑わないのである。

参政党はまた、新党らしく、カリスマ性を演出した党首や何人かの主要人物の人気に支えられており、結局それらの者達のケンカ別れを繰り返している。この点から同党が、やはりと言うべきか、中心人物であり唯一の国会議員である神谷の、個人政党であると分かる。これでは比例代表でわずかな議席を得る以上には成長するはずがない。

最後に国民民主党だ。同党をこの小党、ミニ政党の括りに入れようというのではないが、参院選に限ってはあまり論ずることがないのだ。同党の獲得票数・議席数は前回の2019年参院選と大きくは変わらなかったと言える。選挙区の得票はけっこう減ったとも言えるのだが(ここには残留派と立憲合流派に分裂した影響がある。選挙区で選出された議員、元議員の数が減ったのだからさすがに影響はある)、比例代表の減り幅は小さく、前回と同じ3議席を得た。以前と違い小さな政党になっていたにもかかわらずこの結果であれば、上出来だと言える。

旧立憲民主党と旧国民民主党が合流しても、合流新党が立憲民主党を名乗り、国民民主党の合流不参加者が国民民主党を名乗ったのだから、合流に参加した議員の支持者の票以外は、票の移動があまりなくても不思議ではない(あるいは旧国民民主党の票が、移動した議員の分以上に離れ、それがネット配信に積極的な玉木代表の人気や、右傾化によって埋められたのかも知れない―ただし国民民主党の右傾化を喜ぶ層の多くは、選挙では国民民主党以上に右の、あるいは右らしい政党に投じていると思われる―)。

国民民主党について問題なのは、比例で以前と同じ3議席を取れば良いとは全く言えない事だ。連合の旧同盟系の産業別組織の候補が比例で4名出ており、3議席の獲得ではそれ以外の候補が当選できないどころか、この4名全員を当選させる事も出来ない(旧国民民主党時代の前回は5名中2名が落選し、今回は矢田副代表が落選した。矢田氏は後に岸田総理の補佐官に引き抜かれたが、連合は同意していないのだという。連合旧同盟系・国民民主党切崩し工作の一環である可能性もある)。そしてそれが次に改善される見込みがない状況は、連合旧同盟系の支持を受ける政党としては、大きなリスクであった。

JAM・基幹労連は、2019年は旧国民民主党で組織内候補を擁立したが落選となり、2022年も新国民民主党で擁立すると見られたが、新立憲民主党で候補を擁立した。立憲で立候補した労組(連合旧総評系)の組織内候補は、国民民主党から立候補した組織内候補よりも全体的に獲得票数が明確に少ないにもかかわらず、2019年に4人全員(旧立憲民主党)、2022年にこの候補を含めて5人全員が当選している。

もともと下野後の民主党系の不振により、比例での連合の全組織内候補の当選は難しくなっていた。民進党になり、ある程度復調傾向が見えた2016年でも、別々に擁立したJAMと基幹労連が共に落選となり、2党に分かれた2019年には、加えて電機連合が落としている(電機連合は今回の落選で2回連続、JAMと基幹労連は候補を合わせて一人にしたが、2019年には上述の通り落選している。改めて確認すると、旧国民民主党は5名中2名を落としてしまったのだ)。立憲が全員当選とは言っても、もし新立憲と新国民民主が1つになれば、得票が増えない限り、立憲で擁立している組織内候補が、一人は落ちることになる。

それでも連合旧同盟系は得票が比較的多いわけだから、有利になるために少なくとも一部が、立憲民主党が国民民主党との合流で中道に寄ったのだと解釈するなどして(代表も元前原グループという意味では右派に見える、泉健太になったのだし)、立憲支持に変わるという可能性も少し高まったと言える。

これについては、立憲も振るわない結果であった事、立憲を嫌っている組合がある事、立憲がこれ以上政策面で譲歩しにくい事が歯止めになっている。しかしその後を見ると、国民民主党からは代表代行の前原氏らが離党する一方、立憲の支持率は、もともと国民民主より高い上に、時期によってはより上がっているから、十分あり得る事だと思う。

そうなると、一部に人気があると言うだけでは、国民民主党の存続は厳しくなる。同党についてはその後も色々動きがあったので、改めて述べることにする。

国民民主党の玉木代表は、立憲民主党の泉代表について、左派に縛られていてかわいそうだというような事を言う。本当にそう思っているのか(2021年頃までは自分もそうだったという事か。筆者は左派野党とは意見が違う点もあるが、左派政党をバカにする風潮があるなら危険だと思う)、あるいはそれで自尊心を保っているのか(泉は玉木よりも議員歴が長いが、年齢は玉木の方が上であり、泉と違って初当選後は小選挙区で一度も負けておらず、旧国民民主党では玉木が代表、泉が政調会長であった)。いずれにせよ、これはむしろ国民民主党の限界を示している。なぜなら新国民民主党は、小党である事、それゆえ党首が自由に発信でき、大政党よりも身近に感じられるという、ミニ政党と同様の強みを活かしてきた。右傾化もその一つだ。しかしそれは支持者を限定したり、実際には投票してくれない「支持者」(選挙の時はより明確な右翼政党か、自民党、あるいは野党第1党の立憲民主党に投票する)を増やすにとどまる面がある。維新はどれだけ不調になっても、大阪での支持はすぐには失わないであろうし、橋下、東国原の復帰、吉村の国政転出という切り札も持っている(本人達にその気があるか分からないし、プライドの高い橋下は、国政に復帰したり都知事選に出たりすることがあっても、維新と距離を置いて見せるかも知れないが)。それに比べると国民民主党は、議席ももちろん少ないし、より深刻な状態にあると言えよう。

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