1-32そんな日本の政治に3つの提案1.政権交代論

そんな日本の政治に2つの提案

筆者は、1党優位の状況を改善するため、以下の2つのことを提案しようと思っていた。2017年の民進党の分裂を見る前のことであるが、ここで、状況の変化についても念頭に置きつつ、その提案について述べていきたいと思う。

 

提案①:有権者を審査員とする、「第2党決定コンクール」の開催。

提案②:分裂したら正しいと思う方を国民が判定し、支持をする。

※賛否が半々に近い分かれ方をした場合には、残留派を支持する。

 

まずは提案①だ。幼稚なのは分かっている。しかし、自民党に対する挑戦者をコロコロ替えていてはどうにもならない。特に、中央よりも左にある社会党の系譜が信頼を失った時にだけ、さらに左の共産党が浮上するというようなことは、あまりに不毛だ。2つの価値観・方向性の競争にならず、一つの価値観、方向性が、不戦勝を重ねることになるからだ。日本では今まで、このようなことが多すぎた。

だからとりあえず、1党優位の現状において、その優位政党の挑戦者として、どのような政党が必要なのかを考え、それに見合う政党を、党勢に関係なく選び出し、挑戦者に認定するのが良い、と思うのだ。あとは自民党を積極的には支持していない有権者が皆、選挙の際に、その党(の候補者)に票を投じるのである。「この挑戦者なら、自分はどうしても自民党の方が近い」と思う有権者は仕方がない。

審査の過程は、双方向にするべきだ。非自民各党は、自らの主張をプレゼンするが、その際、希望者からランダムに選ばれた有権者の代表が質問に立ち、時に政党の代表者と議論をし、政党がそれを取り入れても良い。このような過程、中間審査を繰り返すうちに、政党側と、国民の側の双方が洗練され、最後に正式な投票を行う。そんなイメージだ。

これくらいやれば、自民党も埋没するかも知れない。民主党→民進党ほどでないにしろ幅の広い自民党が、与党であるためだけに団結してきたことで、真の、理念、政策を軸とした政界再編が阻まれてきたのであるから、自民党が埋没するくらいでちょうど良い。自民党も参加するというのなら、政権党コンクールに切り替え、準優勝を挑戦者候補としても良いが、その時は、どのような政党に今、まずは政権について欲しいか、その挑戦者には、どのような政党が良いか、その構図にまで気を配る必要がある。ただ単に1番良いのが政権党、次に良いのが政権準備政党、というのではいけない。

自民党の挑戦者を決めることが大事だと述べたが、本当は、自民党も含めた政界大再編が起これば最高だ。しかし、自民党が、その残留派すら優位政党の地位を完全に失うような、本格的な分裂を起こす可能性は、非常に低い。小さな分裂であれば、これまでの繰り返しとなり、それに頼ろうとする野党の意識が変わらないので、ない方が良いというのが、筆者の立場である。

筆者の提案の最大の問題点は、拘束力がないことだ。コンクールで挑戦者に選ばれたからといって、例えばボーナスで150議席を保証するなどというのは憲法違反だ。皆が他の政党(の候補)に投票すれば、今と何も変わらない、ということになりかねない。

それでも、やるだけやってみれば良いと思う。有権者の意識、政党の意識が変わるのではないかと思っている。ブームくらいは起こせるかもしれないし、そのブームは以前のブームとは違って、国民による審査、政党と国民の対話の末のブームである。何かが変わるはずだ。

もう1つの大問題は、自民、公明両党の支持者などが、自民党にとって都合の良い政党(選挙で相手にならないような弱い政党、極端な政党、選挙後に都合の良い場合がある、自民党に近い政党)を勝たせる可能性があるということだ。これは、自民党を含めた政権党コンクールにすれば防ぐことができる。しかしそうでなくても、「自民党だけあれば良いのだ」などという、国民、国家よりも自民党を大事に思う人は多くはないだろうし、それに近いような人々にも考えてもらい、変わってもらうような議論ができなければ、そもそも非自民勢力の力不足である。なお、弱い政党が勝っても、皆がそれを応援すれば、弱い政党ではなくなる。

より現実的な方法としては、与野党がそれぞれ、首相候補の予備選挙を行うというものがある(例えば、吉田徹氏が『「野党」論』115頁で提唱している「非自民ブロックによる公開予備選」。「野党の代表それぞれが、自らの掲げる政策をめぐって公開討論を行い、その上で一般有権者の投票で決着を付け(二回投票制でも構わないでしょう)、一位となったものが野党ブロックの統一首相候補となり、総選挙に臨むというもの」)。各選挙区で、与党候補と野党候補の予備選挙を行うこともできるだろう。しかしそれには、最初に1つの非自民ブロックが形成される必要がある。例えば枝野幸男が統一候補に選ばれたとして、日本維新の会などが、「我が党は推せない」と言えば、結局、非自公勢力のつぶし合いが続くことになる。また、今回は枝野幸男、次の総選挙の前は日本維新の会の議員ということになると、政党制としては安定しない。対立し合う野党がまとまって、同じ総理大臣候補を担ぐのでは、矛盾が大きすぎる。実現が難しい提案であることは分かっているが、筆者はあくまでも、優位政党自民党に対する、挑戦者となるべき政党を決める(既存の政党をたたき台に、そのような政党をつくるという面もある)ことを重要視している。優勝すべき政党を有権者が選び、そして育てる方が、建設的だと思うのだ。比例代表制を採るのならば別だが、そうでなければ第3党以下は、第1、2党のうち、自らに近い方に合流するか、ただただ消滅するしかないと考える。乱暴かも知れないが、一強多弱は非合理的である。政党連合のようなものを組むとしても、また小選挙区2回投票制(選挙区で過半数の票を得た候補が無い場合に、上位2名による決選投票を行う)によって、比較的距離の近い政党間の協力を促すとしても、分かりにくさはつきまとう。全てが一朝一夕にいかないことは承知しているが、第1、2党では不十分だとしても、第3党を育てるのは、1党優位の傾向が無くなってからにするべきだ。優位政党がなくなれば、3つ以上有力な政党があっても、そしてその中で、相対的に近い政党同士がつぶし合うという面が完全になくなりはしなくても、有権者が優劣をつけることができる。

さて、次に提案②である。これは、優位政党に対する挑戦者が、非優位政党の宿命として、分裂を繰り返してきたことに関する対策である。優位政党が現実的であるのに対して、非優位政党は理想主義的であることが多い。それが政権を担う場合、かならず現実という壁にぶつかる。民主党政権の変節のようなことは、本当は良くない。しかし、その変節の少なくとも一部は、現実に対応するためのものであり、現実的になって、安定的に政権を担えるようになるための過程である。

党の決定に異論があれば大いにやり合う。しかし決定すれば従う。決定の仕方が問題であれば、その改善(党の民主化)を目指して活動する。前者は自民党が良くできていると言われることだし、後者は、戦前の大政党の内部などで見られたものである。非優位政党も、それをするべきだ。

今までの歴史を見れば、党に不満を持って離党する議員達は、たとえ筋が通っていたとしても、政権交代可能な勢力にまで発展することは、ほとんど不可能である。1党優位なのだから当然のことだ。しかし分裂した野党を見ても、いつも残留派が多数派であった。政党として国民に浸透することは、そう簡単ではない。そうであれば離党者は、後にして来た政党に再び近づくか、自民党に寄るか、消え去るかだ。それならば、残留派を支持し続けた方が、まだ建設的だ。残留派において、本当は離党者と同じ考えを持つ議員達が、党内で有効な論争を起こすだけの力をつけるかも知れない(本来離党するような議員達が、党内に残るようになればなおさらである)。

良くも悪くも、容易に現実に適応する議員達と、理想にこだわり続け、しかし離党などせず、一定の譲歩もしつつ、それが党内に容れられるよう、努力を続けることができる議員達、その双方によって構成される政党は、多少分かりやすさが欠けるとしても、現実的に改革を進めるような政党になると、考えている。

以上の理由から、離党者を支持しないことで、第2党(野党第1党)の分裂を防ぐことを考えるわけである。しかし、離党者が正しいと思う国民が多ければ、話は違う。選挙になれば、残留派は離党者に対する優位こそ保つことが出来ても、離党者達に大きく票を削られ、野党の多党化が進む。また、その野党の合計議席も、死票が増えることで、さらに減ってしまう。だから、議論と投票によって、決着をつけようというのが、提案②である。投票までの過程において、立場を変える議員がいても良いと思う。たとえそれが選挙を見据えたものであっても、決定に従うのなら、それで良い。そのうちに、政党の方向性は確固としたものになる。

最後に、予備選挙という言葉がでてきたから、予備選挙に関する提案をしておきたい。それは、自民党が各小選挙区において、世襲を優遇しない、公正な予備選挙を行うことである。この当たり前すぎる提案を改めてするのには、理由がある。自民党で出られなかった者が、民進党系から立候補することを防ぐためだ。以前述べたように、主要政党は、政策が似ることはあっても、理念に一定の違いがあるべきで、その理念が自らと近いと思う政党から、政治家志望の者は立候補するべきなのだ。自民党で公正な予備選挙が行われれば、世襲でない者にとってチャンスが増えるし、そこで負けた場合、理念や政策が自分と異なる政党に行って、「世襲優遇だから自民党から立候補できなかった」などと言い訳をして、とりあえず議員になろうとすることもできない。