新たな中立派がなぜ現れたのかを探るため、まずどの選挙区で、どの勢力に代わって現れたのかを見てみる。第3回総選挙へとつながる、第5回帝国議会における衆議院の解散当日の、国民協会、政務調査属所所属議員の選挙区における、第3回総選挙の結果を見てみよう。(2)と付記した2人区の場合は、1名のみが連続当選しているか、または同じ政党の候補者が当選している場合、そして2名ともが同じ政党、会派に取って代わられた場合には、当選しなかった議員の地盤がどの政党、会派に奪われたのかを断定することができる。そうでない場合は、2つの可能性の双方を記し、それぞれに「判別不能」と付記する。総選挙後に移動している場合は、「~へ」などと付記する。
国民協会所属議員の選挙区
・国民協会の候補が当選(再選を含む)
岩手3区(中立倶楽部へ)、埼玉4区(2)、富山1区(2・無所属に)、岐阜1区、愛知8区、愛知9区、大阪1区(無所属に)、大阪5区、広島4区、山口3区、福岡4区、長崎6区、熊本1区(2)、熊本2区、熊本3区(2)、熊本3区(2)、熊本4区、熊本6区、大分3区、大分4区、大分5区、鹿児島1区、鹿児島4区、鹿児島7区
・立憲改進党の候補が当選
岩手2区、東京12区、兵庫8区(2)
・同志倶楽部の候補が当選
青森1区(2)、佐賀1区(2)、佐賀2区(自由党へ)、大分6区、宮崎2区
・自由党の候補が当選
山形2区、山県3区(2)、群馬4区、石川1区(2)、山梨2区、長野4区(2・湖月派か判別不能)、岐阜6区、愛知1区、愛知2区、滋賀4区、福岡2区(2)、福岡2区(2)、福岡5区、福岡7区、長崎1区(2)、長崎1区(2・無所属に)、長崎3区、長崎5区
・中立倶楽部に属することとなる無所属の候補が当選
秋田1区、東京5区、東京8区(独立倶楽部へ)、岐阜2区(独立倶楽部へ)、岐阜5区(独立倶楽部へ)
・独立倶楽部に属することとなる無所属の候補が当選
東京1区、岐阜4区
・湖月派に属することとなる無所属の候補が当選
長野四区(2・自由党か判別不能)
・その他の無所属の候補が当選
岡山1区(2・中国進歩党へ―会派は立憲改進党の議員集会所―)、鳥取1区、山口1区(2)、山口1区(2)、山口2区、山口4区(2)、山口4区(2)、山口5区
政務調査所所属議員の選挙区
・旧大日本協会・政務調査所派に属することとなる候補が当選(再選を含む)
京都1区、京都6区、奈良2区(2)、鳥取3区
・立憲改進党の候補が当選(いずれも中国進歩党を結成するも会派は立憲改進党の議員倶楽部)
岡山2区、岡山4区、岡山5区
・同志倶楽部の候補が当選
佐賀3区(自由党へ)
・自由党の候補が当選
宮城1区、宮城3区、福島2区、京都5区(2)、島根1区、島根4区、宮崎1区
・独立倶楽部に属することとなる候補が当選
島根2区
・その他の無所属の候補が当選
京都5区(2・再選)、奈良1区、鳥取2区
自由党に多くを削られているのが分かる。国民協会の前職が不出馬を決めた場合も含めて、同党が国民協会から議席を奪う形となった選挙区の約半数、政務調査所から奪う形となった全ての選挙区は、取り戻したものではなく、初めて獲得したものであった。第3回総選挙後に結成された中立会派である中立倶楽部、独立倶楽部、湖月派に属することとなる議員は全部で29名であるが、そのうちの8つ、あるいは判別不能の1つを加えた9つの選挙区も、国民協会から奪う形となったものである。