日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
新民党(⑤)~新民党とかつての民党~

新民党(⑤)~新民党とかつての民党~

第25回帝国議会では、又新会の村松恒一郎(新聞記者出身)らが提出した新聞紙法案が成立した。予審関連記事の掲載禁止、刑罰の緩和を中心としていたが、内閣の意向を受けて内務大臣の発売頒布禁止の対象が緩められた。それだけではなく、刑事責任を問う対象が署名編集人から、実際に編集をした者、記事署名者にまで拡大された。また、新聞社の経営者(側の)議員達の意向を受け、発行保証金の引き上げ、正誤文・弁駁文の掲載権の縮小などが行われた。背景には新興紙の参入と反論権による無料掲載を防ぐ狙いがあった。言論、表現の自由はむしろ後退したと言えたが、多くの議員達が、もっぱら社会主義的言論を取り締まろうとする第2次桂内閣の姿勢を信じ、受け入れたという面がある。自由民権運動と違って、社会主義運動は取り締まられて当然、少なくとも仕方がないという姿勢であったのだ。

第25議会では、内閣の遠洋航路補助法案も、衆議院に於ける修正の上、成立している。又新会は、効果を疑問視し(つまり有効ではないのに他の狙いから実現しようとされていると考え)、これに反対している(『帝国議会衆議院議事速記録』二三48~54頁)。島田三郎はもともと航海補助というものについて、大会社の独占を助成するものだとしていた。

農業保護の観点から米籾や大麦、小麦の輸入関税を引き上げようとする、立憲政友会の千田軍之助らの法案の審議において、又新会の鈴木力は、消費者保護の観点から反対している(『帝国議会衆議院議事速記録』二三364-365頁)。また、大同倶楽部の浅羽靖氏らが提出した税制整理に関する建議案についても、又新会の高木正年が、税制整理の名の下に悪税廃止が延期になったことを挙げ、税制整理の名の下に財政整理を怠るべきではないという立場から、反対をした(同241頁)。財政整理をして悪税を廃止した後で、改めて税制整理をすべきだというのだ。このように又新会は、やはり民党的であった。ただし新民党とかつての民党との違いはある。かつての民党にとって、負担軽減とは地租のそれであった。当初は産業構造上も税制上も、税と言えば地租であった。民党が、選挙権を持つ豊かな地主層の利害を代弁していたのは確かだが、支配される側の人々を代弁していた面も当然ある。新民党はそれと比べて市部、実業家、さらには消費者の利害を代弁する面があり、その背景には時代が進んだ事もある(当時の新民党が市部、実業家、消費者のための政治を掲げていたわけではないが、彼らは、より進歩的な勢力であったこと、人的な構成からも、非財閥、非政商の商工業者、一般市民―封建的な風土の中にあった郡部の保守的な有権者よりは、市部の人々―の代弁者になりやすかった)。

 

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