日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
選挙制度の影響(⑨)~減税で有権者の数が減る制限選挙制~

選挙制度の影響(⑨)~減税で有権者の数が減る制限選挙制~

当時の日本の選挙制度は、一定の納税をしている国民にのみ選挙権が与えられるものであった。石井裕晶氏は、当時の制限選挙に注目し、地租の軽減だけだと、立憲政友会が強い農村部の有権者が減少する事を、同党が警戒していたとする。同氏はこのことを、都市部でやや強かった憲政会→立憲民政党について(立憲政友会の逆が言えるわけである)も含めて、非常に重視している。筆者はこれについて面白い考えだとは思うが、石井氏も断言はしていない通り、根拠に乏しいと思う(著書『制度変革の政治経済過程―戦前期日本における営業税廃税運動の研究―』を読む限り)。石井氏は、衆議院の普通選挙に関する法律案の委員会において、地租、営業税の減税が有権者の減少を招くとして、原系の腹心でありながら普通選挙法案を支持した、吉植庄一郎の発言を挙げている(同142頁)。

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