日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
1党優位の傾向・1列の関係・野党再編(⑨)~再び実業家層に食い込む自由党系~

1党優位の傾向・1列の関係・野党再編(⑨)~再び実業家層に食い込む自由党系~

実業家の多くが期待した営業税の改正を成功させたことで、立憲政友会は、実業家層における支持を一定程度獲得することができたようである(又新会や戊申倶楽部の実業派は、内閣の営業税法中改正法律案について、商業者にむしろ苦痛を与えるものだと反発していた)。もちろん実業家層、商業会議所からの営業税に関する働きかけも当然あったし、商業会議所法中改正法律案で、立憲政友会を敵に回す事の不利益を実感した実業派議員も多くいただろう(本章実業派の動き(⑤)~戊申倶楽部の内部不統一~参照)。1910年4月14日付の原敬の日記には次のようにある(『原敬日記』第4巻45頁)。

日本橋區の有志者(實業家各團躰の代表者)より招かれて日本橋倶樂部に赴きたるが、彼等が是迄進歩黨にのみ同情し居たるも、今期議會の情㔟を實見して到底政友會に依るの外なきを認めたる由にて、先頃營業税其他彼等の希望は我黨の決議に因り貫徹したるを機會として、表面無意味に懇親の爲めと稱して余等幹部の者を招きたるに因り出席したり。

実業家が憲政本党(当時は進歩党とも呼ばれていた)に近かったと言っても、同党は市部でほとんど議員を誕生させることができておらず、これで2大政党の力の差がさらに開く可能性が高まった。この事も、憲政本党と他党派の合流を促したのかも知れない。

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