日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
新民党・実業派の動き・政界縦断(⑨)~2大政党制の芽~

新民党・実業派の動き・政界縦断(⑨)~2大政党制の芽~

又新会の小川は、文官任用令の勅任官に関する制限を削除することを求める建議案を提出し、これは満場一致で可決された(『帝国議会衆議院議事速記録』二四371頁)。同派の村松恒一郎は、官紀粛清を求める質問を、事態の深刻さを強調しつつ行い(同176~180頁)、花井卓蔵は緊急勅令を出した後、それを議会に提出して承諾を求めるという事をしない内閣のやり方を批判する質問をしている(同243~246頁)。同派の高木益太郎らは、衆議院の常任委員会と特別委員会を公開とすることなどを内容とする議院法中改正案を提出している。これについては立憲政友会の伊藤大八が即座に否決しようとする動議を出し、又新会の卜部喜太郎が委員会付託を主張したが否決され、伊藤の動議が可決された(同432~435頁)。第26回帝国議会の様子を見ると、差異のある2大政党による、2大政党制の芽が隠されていたことがよく分かる。又新会も戊申倶楽部も、規模もそう大きくはない、単なる会派であった。しかし地租軽減よりも他の税の軽減を重視する点、第1次産業の生産者よりも、商工業者や消費者の利益を重視する点で、立憲政友会と明確な差が表れていた。もちろん両会派には、そうでない議員も少なからず含まれていたが、憲政本党にも、両会派と近い議員が少なからずいた。そのような議員達を集めても、短期的には立憲政友会と並ぶ規模にはなり得なかったが、長期的に見れば、可能性はあったのだといえる。また、立憲政友会の積極財政による、地方を重視した利益誘導政治を無責任なものだとする点、立憲政友会中心の内閣の外交姿勢を曖昧なものだとする点に限れば、山県-桂系と親和性があった(もちろん軍拡に関しては一致し得ない)。

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