2021年の総選挙の後、筆者は参議院が「死んでしまう」事を心配した。
この総選挙についてはすでに述べたので省略するが、野党第1党が弱り、第3極に勢いがついた。
それでなぜ、参議院が「死んでしまう」のか。
参議院は都道府県ごとの選挙区と、比例代表制の並立制である。
都道府県ごとの選挙区では、大都市を含む一部の選挙区(都道府県)の定数が多く、ここでは各党が議席を分け合う。
そして大部分の選挙区(都道府県)は1人区(小選挙区)であり、ここでは農村部で強い自民党が有利である。
野党第1党が比較的好調で、他の野党がその野党第1党に協力するような場合でも、この1人区で勝利するのは困難だ。
それが崩れた今、1人区は自民党がほぼ全勝する。他の少数の選挙区や比例でこそ、各党が議席を分け合うとしても、1人区がこれでは国民が野党に期待しにくい。
勢いも含めれば同格になりつつあった立憲と維新は、自民党と戦うどころではなく、お互いに批判を繰り返す。それが国民の野党に対する期待をさらに小さくする(一部の人が特定の野党を強く支持するとしても、全体としては)。同時に多弱化した野党は、「反対ばかり」が批判される風潮の中で、自分達の提案を自民党に採用してもらおうと、自民党にすり寄る。
これでは比例代表でも自民党有利となるし(2021年総選挙の比例代表では自民党が非常に好調であった)、選挙が終わっても、国会が自民党の「味方」、「子分」ばかりになる。
参議院は自民党1党優位の度を強め、もはや自民党を監視する力も、自民党に対案をのませる力もなくなる。
参院選は3年に1回でも、一度の選挙で決まった議席(参議院全体の半数)は6年間維持される。
自民党が一度圧勝すれば、参議院での自民党優位は6年間は続く(3年後の参院選で野党がある程度勝ってもひっくり返せなくなるし、そもそも参院選でも自民党は勝ち続けている)。
これでは仮に、総選挙で政権交代を実現させても、新政権は参議院では少数派だ。ねじれ国会で苦しめられる。
これは予想できる事だから、国民は政権交代について、さらに消極的になる。
という未来を予想したのである。
結果はどうであったか。
かなり想像に近い、自民党の大勝となった。
しかし参議院は死ななかったと言える。
なぜか。
選挙の数日前に安倍元総理が銃撃され、死去するという事件があったからだ。
このようなテロは絶対に許されないし、参院選だけを見れば、むしろ自民党に有利な出来事であった。
しかしこの事件は、統一教会という問題のある宗教と、自民党との癒着を表面化させた。
これは大きな波から日本国民をすくい上げた。
大きな波とは、「もう自民党優位は崩れない」、あるいは「自民党優位のままでいい、それしかない」、
という空気である。
さて、今は2023年11月である。
自民党1党優位は思ったほど深刻ではなくなったように見える。
しかし1強2弱の状態は続いている。
これから2022年参院選以後を振り返りつつ、日本の政治の問題点を確認し、これからどうすべきか、考えていきたい。
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