この参院選の結果が立憲に突き付けたのは、次の総選挙で立憲が微減程度に終わるとは考えにくい事だ。状況が変わって順境にならない限り(自民党が好きな時に総選挙をする事ができるのだから、総選挙の時に立憲が順境にある可能性は低い)、野党共倒れのリスクがある小選挙区が厳しいのはもちろん、比例も今回維新を下回る3位となった事で、前回得た無党派層の票を失う可能性がある(この恐れは維新の失速でなくなったが、その場合にも新たな第3極の政党が浮上する可能性が、残念ながら高い)。
よく現状を55年体制の再来だと言うが、小選挙区中心の選挙制度はそんな事を許さない。自民党以上に票を集められるようにでもならない限り、55年体制・中選挙区制下の社会党よりもずっと少ない議席になるからだ。実際にそうなっていないのは、民主党→立憲民主党の中に、自民党出身者等、自民党候補以上に票を集められる議員がまだいるからだ。しかしそういった議員は、新たに生む事ができない限り、時が経つと共に減る(新たに、しかも多く生むには、今よりはるかに強い政党になるしかない)。
集票力に乏しい第2党は、各選挙区で第1党と戦いながら、さらに第3党以下、あるいは無所属の有力な政党・候補の挑戦を受ける。そんな第2党が第1党になるのはどんな選挙制度でも至難の業だが(小選挙区制と比例代表制では、確かに中選挙区制下と異なり、同じ政党の中での票割りは不要だ。しかし小選挙区では地元の利益も考えて、選挙区の唯一の当選者を自民党にしておきたいと考える住民は少なくない)、小選挙区制も比例代表制でも(衆議院は今は両者の並立制)、第3党に転落する可能性は中選挙区制の時よりもずっと高い。
立憲の議席が激減する場合、それを埋めるのは維新等の第3極だと思いがちだが、そうとも言えない。比例代表については確かにそうだろう。ただし比例代表制は小選挙区制と比べ、変化が緩慢なものとなる。立憲が前回の総選挙よりも比例獲得議席を減らす可能性はある(制度や投票率の水準が異なる衆参の選挙を安易に比較はできないが、今回―2022年―の参院選の立憲の比例票の少なさを見る限り、衆院の総選挙で前回の基準を、-それも第2党としては決して高いものではないのだが-維持するのは容易ではない)。しかし直ちに立憲の比例獲得議席が壊滅的なものとなる事はない。まずは小選挙区で立憲が議席を大きく減らし、議席数(つまりは集票力)の面で第2党としての資格に疑問符が付かなければならない(支持労組の集票力は昔ほど強くないし、疑問符が付けば、それはさらに落ちると考えられる)。つまり次の総選挙における小選挙区の結果を見て、次の次の総選挙で全面的に大幅に減少するのだ(もちろん「よほどの事がない限り」という条件は付くが)。
そしてその、次の総選挙における小選挙区での立憲大幅減が起こるとすれば、それは何より他の野党との共倒れによってもたらされるのである(第3極等の野党が自民と立憲の両党に勝てるような選挙区は、基本的には大阪くらいしか考えられない。その大阪はすでに前回、維新が制している)。立憲が減少する分は少なくとも一度は、自民党がほとんど吸収するのだ。それは当然、自民党が不利になりにくい、つまり失速しにくい事を意味する。そうなると維新も、仮に野党第1党にはなれたとしても(その可能性自体低いのだが)、自民党には勝てない。
人口移動と定数是正で都市型の選挙区が増え、さらに住民の意識の変化で、都市型でない選挙区のマインドも変化すれば、維新にも勝機はある(しかし維新、あるいは維新に取って代わる政党は、その時を大きな失敗もなく迎えなくてはならず、それは非常に難しい事だ。あるいは大阪万博さえ開かれれば、そこに、その周辺に問題が多くあっても、維新の支持が高まるという事もあり得なくはないが)。しかし自民党が優位性を失うほどの変化には、おそらく時間がかかるだろう。
筆者は立憲が野党第1党であり、自民党と交互に与党第1党になる事が合理的だと考えるが、立憲を推す人にとっても維新を推す人にとっても、準決勝とも呼ばれる第2党争い(野党第1党争い)が続くのは最悪な事だと言える(それともまさか、少しの議席の増減に永遠に一喜一憂するつもりだろうか)。
いつまでも自民党のライバルが確定しない、従って自民党政権が続くという事に、このままではなりかねない。急がば回れは必要だが、王道を外れてさまよう事に、このままではなりかねないのだ。さすがにそれでも浮上できるだけの余力は、日本にはもう残されていないのではないだろうか。
