日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
日本維新の会

日本維新の会

次に維新の会だ。すでにいろいろ述べているから、簡単にまとめておく。

維新の会には2つ道がある。1つは、左派野党とある程度の協力をして、自民党からの政権交代を目指すという道である。政権交代の定着を望む筆者としては、再度の政権交代と、自民党の少なくとも一定程度の弱体化を望むから、積極的な協力は無理でも、すみ分けくらいはして欲しいと思う。

それで自民党に勝てば、当然次の政権が問題になる。筆者にとってはもちろん、自民党中心の政権が続くよりも、民主党系と維新の連立が良い。そうでないと政権交代の定着になかなか進まない。

その場合維新の会は、大阪に関することと、地方分権の要求を民主党系にのませ(※)、モデルケースにするという意味でも、大阪でやりたいことをやる。民主党系は、大阪については、(まだ)最も支持されている維新に、一度任せる。分権については互いに譲歩もしつつ、マイナス面をチェックする(大阪選出の立憲民主党の議員は少ないが、平野博文は代表代行、辻元清美は副代表である。彼らが同意できるかは問題ではある)。しかし立憲民主党主導の政権なのだから、全体的には平等重視になり、新自由主義的改革で不利な立場になる人々がいれば、特に手厚く救われるはずだ(そうでなければ民主党系の存在意義がなくなり、維新主導の政権、再編になっていくだろう。それを立憲の要人達が許すはずがない)。

※ 地方分権は民主党も唱えていた。立憲民主党は今、州都1強の新自由主義になると捉え、道州制には否定的なようだが、地方分権自体を否定しているのではなく、基礎自治体を重視するということであるようだ。

 

橋下徹は、弱者を固定させないために競争が必要だとする(橋下徹、三浦瑠麗『政治を選ぶ力』124頁)。これは、維新と左派政党との、協力の手掛かりになるはずだ。もちろん左派政党にも柔軟さが求められる。ただしそれは、耳を傾ける、考える、良く変わることをいとわないという柔軟さであり、弱者を見捨てる柔軟さであってはならない。

立憲主導という前提で述べているが、維新の比例票が民主党系と比べて遜色のないものであれば、維新の発言力はより強くなる(そうなるべきだが、議席数で立憲が上である場合は、維新にも当然自制が求められる)。維新主導の連立も考えられないわけではないが、可能性は非常に低いし、野党慣れしている左派野党が、与党内野党になるリスクが大きい。

維新はいずれ、大阪府の次の舞台を探すことになるだろう。その時には大阪周辺と共に(大阪周辺はすでに舞台に組み込まれているかもしれない)、東京とその周辺が候補となるだろう。しかしそれでは、立憲民主党との最低限の協力もより難しくなる。連立は動揺し、崩壊するだろう。

それまでに、自民党が弱っていれば問題はない。改めて総選挙で、立憲と維新が勝負をすれば良い。自民党が弱っていなければ、もう少し頑張って民維連立を続けるしかない(自民党と支持基盤の関係が非常に弱くなるか、支持基盤そのものが弱くなるまで。利益団体自体が必ずしも否定されるべきではないので、前者の方が良いと思う。何もかも自民党にぶら下がる構図が、変わることが望ましい)。それがどうしても駄目なら、維新は立憲との連立を解消して、自民党と組むしかない。政権に返り咲くことができるなら、自民党は何だってする政党だ。最初のうちは維新の要求をのむはずだ。維新の会が自民党と組むのは、後述する2つ目の道でもある。

癒着・ばらまき保守(自民)の代わりは、主に左派政党が、恣意的なやり方ではない、平等重視の観点で取り組む。労組という利益団体を基盤とする政党であっても、支持基盤が非正規雇用の人々にも広がり(民主党系の支持基盤である連合も、もっと非正規に拡大するべき)、被用者一般の利益を代弁し得るものとなって、さらにはそれ以外の、立場の弱い人々のことも重視するなら、それで良い。それは自民党のようなクライエンテリズムとは違う。AIの発達などで、仕事の量や種類がこれから変わる。働き方も変わって来るだろう。そんな時こそ、格差の拡大を止める、社民系の左派政党、路線は必要である。そしてそれも当然、必要に応じて変化はする。

一方で維新の会が頑張れば、各地の(新自由主義的)改革派を並行して勃興させられる。彼らは国で地方で、必要な時に政権を任され、社民系の欠点を補うようになるだろう(自民党が崩壊していればもちろん、弱っていれば、保守陣営で維新等、新自由主義的改革派の力が強まる)。

次に維新のもう一つの道、自民党と組むことについて、少し述べたい。こちらの方が現実的で、すでに述べているし、かなりシンプルだ。とにかく自民党、自民党の陣営を、明確な保守政党にして欲しい。保守にも幅はあるが、伝統重視・競争重視というのが定番だ。その路線を徹底する必要はない。左派政党との間に理念の違いがあれば良い。今は曖昧過ぎる。

例えば他国なら、与党である保守政党の、新自由主義路線が受け入れられなくなる(完璧なものなどないから、いつかは問題が生じるものだ)。次にその保守政党が野党になる。そして自らの路線を点検し、それまでのものを強化するか、ある程度転換する。そしてやがて、選挙に勝って与党になる(党首が交代するのも普通は野党時代であり、それは路線点検と一体的なものである場合が多い)。

しかし日本の場合、自民党が曖昧であるか、与党のまま、右に左に移動する。国民は選択する機会を奪われる。維新にはそれを明確にして、違いのある左右の2つのグループの対決に、日本を持っていって欲しい。もちろん自公維vs左派野党では力の差があり過ぎるようにも見えるし、国民民主党まで自民党側に移りそうでこわくもある。しかし対立軸が明確になるなら、野党もハンデを克服しやすい。少なくとも、維新が第3極として左派野党と非自民票を分け合って、自民党をアシストするよりは良い。あとは国民が試されるということだ。

 

立憲民主党→

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