1-03歴史上一度だけの政権交代1.政権交代論

一票の格差の是非

これまでに述べたことについて、補足しなければならないことがある。

1990年代、2000年代の自民党は、特に無党派層に不人気であることが多かった。しかし同党の政治から利益を受ける人々、自民党と連立を組む公明党の創価学会の人々が票を投じること(2000年代)、自民党が利益誘導によって票を得やすい過疎地域に、人口移動と、それに応じた定数や区割りの是正の遅れとして、比較的多くの議席が配分されていること、投票率の低さによって与党の地位を守っていた(五十五年体制下には、投票率が高い方が自民党に有利だと言われていた時代もあった)。

これを変えようとする場合、一票の格差の完全に近い是正に取り組む必要があった。しかし小選挙区については区割りの変更を繰り返さなければならない。また、参議院の小選挙区が増えるだけでは足りず、複数の県にまたがる合区を増やし、大選挙区(1人区でない都道府県選挙区)の定数を増やしていかなければならなくなる。これらは容易でないか、新たな問題を生じさせる(展望もないまま、専ら過疎化を阻止するために優遇措置を採ることは、日本全体の今後を考えれば問題だと思うし、過疎地の人々に譲歩を強いることも、場合によっては必要だと思う。しかし、多数派の都市部の住民が、少数派の過疎地の住民の意思を理不尽に無視する、あるいは踏みにじる事態に陥りやすくなるのは、やはり問題だ)。両院の選挙制度を大きく変える方が、話が速いかも知れない。それができてもできなくても、過疎地域が自民党という1つの政党の利益誘導に頼らざるを得ないという状況を、財源が限られていることからも、変えなければならない。これも容易ではないし、痛みも伴うものとなる。

今の自民党は、無党派層においても、比較的強い支持を得ている。それは、同党の新自由主義的な姿勢によるところが大きい。例えばTPPへの参加について、自民党は野党時代に反対し、与党になってからは賛成している。しかし、民主党の様に変節したというのとは少し違う。自民党の議員達は、地元に利益になるようなことを言う。例えば単純化すれば、都市部の議員はTPPに前向きな姿勢を示し、地方の政治家は反対、あるいは消極的な姿勢を示す。あとは党で間を取るような調整をし、それができない場合、敗れた側には他の方法で配慮する。地方の場合、自民党に見捨てられることはマイナスであり、反発することも難しい。

確かに、政治改革、行政改革によって、政治、自民党は変化してきている。しかしそれでも(それだから、という面もあるが)、異なる層、地域の声を、理念や政策に差異がある複数の政党が代弁するよりも、自民党が1党制であるかの如く、全て調整するという傾向は残っている。

都市部では風が吹く。自民党の議員でも、簡単に落選してしまう。地方で自民党の議員が落選することは少ない(民主党の政権交代ブーム、2016年の参院選における東北地方における民進党の大勝―TPPも大きく関係している―など、例外はある)。しかも実情よりも多くの議席が配分されているということにも助けられ、人数が多い。これが、自民党が何でもありの政党から変わらない、何でもありの政党であることが許される要因となっている。

引き続きTPPを例とすれば、これに積極的な政党と、反対、あるいは消極的な政党が政策を戦わせるのが筋だし、有権者も明確に選択することが出来ると思う。あるいは2大政党の双方が賛成であっても、具体的な条件について議論を戦わせるのでも良いかも知れない。1党優位の文化が根付いている日本では、このような議論を、与党の中だけで行い(それすら、近年では不足しがちだが)、野党は反対をするという傾向が、あまりに極端だ。

都市部対地方という対立が、あまり建設的なものではないのは確かだ。都市部で野党や新党、地方、または全体で自民党、TPPに反対の地域で民進党(民主党内閣はTPPを進めようとしたのに・・・)というのではなく、都市部でも地方でも、日本の在り方を巡って、プランAの大政党と、プランBの大政党が戦うという面が、もう少しあるべきだ。

最後に補足すると、参議院の合区に反対の議員がいる。一票の格差がどれだけ大きくなっても、1つの都道府県から、1回の選挙で1人は当選させなければ、その地方の声が政治に反映されないという意見だ。筆者もこれには半分賛成だ。半分としたのは、過疎化対策は必要だが、どうしても過疎化が進んでしまう地域はあり、その地方の声に耳を傾け、効率を無視して対策を講じれば、日本全体が沈むこともあるからだ。高度経済成長期の様に、分け合えるパイがどんどん増える時代ではない。地方に厳しい姿勢も、時には取らざるを得ない時がある。

地方の求めに応じてばらまきをする自民党1党優位の下では、人口比以上に地方の声が反映されることには問題がある。それでも参議院において1都道府県から最低1名を出すというのなら、参議院の権限を弱めるべきだ。そうでなければ、衆議院の総選挙で政権交代の民意が表出しても、参議院ではなお自民党が多いというねじれ国会になり、新政権が早々と窮地においやられるだけだ。あるいは、そのようになるのを防ぐため、野党第1党が地方を優遇しすぎるような政策を掲げ、其の財政的な負担により、日本全体が沈むことになりかねない。