日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
自民党とその金魚のフン連合の場合

自民党とその金魚のフン連合の場合

小池新党にはそもそもどのような道がったのか、その先にはどのような光景があったのか。考えておきたい。

小池新党には2つの道があったと考えられる。1つは、現在の日本維新の会のように、自民党に接近する道である。もう1つは、非自民・非社会・非共産勢力の結集であった新進党のような政党を、非社会は非民進となるわけだが、つくることであった。その際、社会党~民進党の左派ではない議員達は、切り崩される対象となる。

まずは前者である。自民党にはすでに公明党、日本維新の会、極小勢力だが日本のこころがぶら下がっている。小池の希望の党が国政において東京を中心に多くの議席を得ても、相乗効果で維新の近畿地方での獲得議席が増えていたとしても、自民党の優位が大きく揺らぐところまではいかなかったであろう(自民党が第1党でありながら、東京、名古屋、大阪とその周辺などであまり多くの議席を得られない状況が続けば、何か動きはあったかも知れない。しかしブームとは一過性のものである)。

自民党の優位が揺らがない場合、それにぶら下がる公明、維新、希望の3党は、それぞれ自民党に要望を出して、政策を実現させることになる。しかし、この中では公明党が圧倒的に有利だ。理由はもちろん、組織票を自民党に献上しているからである。2000年に自民党が小沢の自由党との連立を解消することができたのは、自由党の切り崩しに手ごたえを感じていたこともあるが、何より、公明党との連立も実現させており、それが維持可能であったからだ。従って、自民党にも当然反対はあるだろう希望の党の要望は、良くても少しだけ容れられるという程度になっていたであろう。

東京、大阪に限定される利益、つまり地方分権を大きく進めるものではなく、自民党の路線に大きな変更を求めるものでもない利益を実現させることは、可能であったかもしれない。しかし、それは希望、維新両党を、地域政党にとどめることに直結していたはずだ。もっとも、それすら、自民党が農村部を重視する傾向を持っているため、容易ではない(自民党では、無党派層の多い都市部の選出の議員の方が落選しやすいことから、農村部選出の議員の方が力を持っているという傾向がある)。維新、希望両党と、2000年の小沢の自由党(残留派)が異なるのは、自由党が小沢の地元の岩手県以外には強固な地盤がなかったのに対し、日本維新の会は大阪府、希望の党は東京都と、やはり一都道府県ではあるが、大量の議席が配分されているところを地盤としていたことだ(希望の党はごく短期のブームに過ぎなかったが)。これが民進党の陣営に流れれば、自民党にとっては大きな痛手だし、政権交代、あるいは次に見る、野党の刷新が起こる可能性もあった。

両党はそれでも、大阪府と東京都で圧倒的な存在になれば、一つの強力な武器を手に入れることができた。それは、双方を主な基盤とする公明党を、双方の小選挙区から駆逐するという、おどしが使えることである(「おどし」といっても、本拠地で自党の候補を擁立するのは当然のことだ)。これはすでに、大阪都構想の住民投票を実現するために、橋下が公明党に使い、公明党の懐柔(住民投票実施への賛成)に成功している。公明党は、大阪では維新、東京では小池、それ以外では自民党と、強い勢力には逆らえないことを、自ら認めるような協力体制を採った。これではさすがに、自民党の陣営における公明党の力は落ちる。実際、2017年の総選挙における公明党敗北の原因には、右傾化する自民党に追従することに対する反発と、比例区で公明党に入れていた自民党支持者の、東京における公明党の裏切りに対する反発が考えられる。前者は以前から見られたことであるのに対して、後者は2017年に入って初めて見られた出来事であるので、後者が要因である可能性が高い。

公明党の力が落ちれば、維新、希望(・都民ファースト)、公明3党が意見をまとめ、それから自民党に圧力をかけることも可能となる。しかし自民党という引力の強い「恒星」を前に、3つの「惑星」がまとまるためには、政策の一致、または政策が一致しなくても取引ができる(良いことだとは言えないが)だけの関係を築く必要がある。そうでないと各個撃破される。かつて仲の良かった社民党とさきがけですら、閣外協力になった後、各個撃破された(新党さきがけが唱えた大蔵省の財政と金融の分離について、同意見であったはずの社民党が、消極的な自民党に同調した)。

公明、維新、希望がしっかりまとまった場合、それはむしろ新進党のような一大政党の誕生に近いものとならざるを得ないのである。続きは「両方やる場合」で述べるが、日本の会と小池新党(都民ファースト、希望の党)は、実際には仲良くすることができなかった。

大阪で改革を断行し、それを基礎に政権を狙う日本維新の会にとって、政策には似たところがある希望の党は、連携相手とし得る政党であると同時に、自らのステップアップに邪魔な存在でもあった(とは言っても、美辞麗句を並べる公約よりも、本気でやりたいことは何かということが重要であるし、維新が大阪の副首都化、希望がベーシックインカムの導入と原発廃止を謳うなど、差異はあった)。相手は自身より若くても、首都東京を拠点とし、指導者はベテランの小池百合子である。石原慎太郎と組んだ時、江田憲司と組んだ時の繰り返しとなるか、希望の党と完全に一致するわけではない自らの政策を、貫徹するだけの影響力を失うリスクがあった。希望の党が「口先だけ」であった場合、振り回された挙句、共倒れということにもなりかねなかった。

小池新党にとっては、日本維新の会は是非とも連携したい相手であったが、やはり、「自らが主導権を握れるのなら」という条件が付いていたと言える。それは、今までの第3極のように、リーダーの自己主張が強いからというだけではない。日本維新の会の方が、実績があったからだ(正確には、大阪維新の会の方が都民ファーストよりも、橋下大阪府知事→大阪市長の方が、小池東京都知事よりも実績があったからだ)。そのような相手に主導権を渡すのでは、日本維新の会、あるいは大阪維新の会に入党するのと、そう変わらない。総理のポストでも約束されない限り、小池にはできなかったはずだ。

そもそも、同じ大都市とは言え、東京一極集中を基本的には肯定する東京中心の勢力と、東京に対抗しようとする大阪を基盤とする勢力が、良い関係を築くことも、容易ではない(小池都知事側が東京一極集中の解消による東京都の環境改善を唱えても、それはそれで面白かったのだが)。

 

新進党再興の場合→

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