日本人はなぜ政権を選び取ることができないのか、考え、論じる
 
低所得者のネトウヨ、かつて低所得者が多かった創価学会を味方にしている

低所得者のネトウヨ、かつて低所得者が多かった創価学会を味方にしている

自民党は使用者の支持を得る保守政党である。そして社会党~民進党系は被用者層を支持基盤とする社会民主主義政党である(でもある)。この点では、日本も他の先進国と同様である。しかし自民党は、ヨーロッパでは既存の保守政党と競合関係にある、極右政党を支持するような人々の票まで得ている。

中国が反日教育をしているように、分かりやすい敵をつくることで、国内がまとまりやすくなったり、国のリーダーに対する反発が弱まったりする。しかし安倍自民党が、これをしたというわけではない。もともと中国、韓国、北朝鮮を嫌う人々が増えてきたところ、安倍の右寄りの姿勢がフィットしたのである。右寄りの姿勢とは、具体的には、自衛隊を正式に軍隊とし、その活動範囲を広げることなどである。これは本来右翼的な発想などではないのだが、左派が非現実的な平和主義であるため、また、安倍らの本来の志向が、より右であるだろうことに対する懸念から、かなり右に見えている。もちろん、誤った戦争の歴史を忘れてはいけないし(日本だけに当てはまることでは全くないが)、自民党を現実的だとして評価することは、2012年の強圧的な憲法改正草案を見ても分かる通り、もはや出来ない。

反日感情を国内政治に利用する、中国や韓国の愚かさに、日本の自虐史観を改めようとする運動などの影響が合わさり、中国や韓国は低レベルの国で、日本は優れた国だと思うことによって、自尊心を満たす人々が現れたのだといえる。その中には自分の主張に酔うことができるだけの自信を持つ人々の他、自分の人生に満足できない部分を、中国人や韓国人、左派〜左翼的な人々を見下すことで埋めるような人々もいるのだと考えられる。安倍自民党は、彼らの心の拠り所となったのである(たちあがれ日本〜日本のこころもそうだが、強い自民党に自分を重ねる方が、自尊心は満たされやすい)。

このような状況になった原因は左派にもある。自虐史観は、神武天皇が実在したと考える人々を笑えないくらいに、行き過ぎたもの、冷静な分析を欠いたものであった。左派的な政治家達は、自国を守ることに本気で取り組まず(あるいは取り組んでいると思い込んで)、自国の悪いところを、しかも事実と異なることまで、宣伝した。そして、本来自分達左派を支持してくれるはずの、低所得者層の一部を、敵に回したのである。

左派を批判したが、それだけで終わることはできない。自民党の中心となる自由党の系譜、そして自民党は、戦後のほとんどの期間、政権を担ってきた。戦後の日本は自民党そのものだといっても、そう大げさでもないだろう。左派系の人々にとっては、戦前も同じようなものである。そしてこの状況は、とても変わるようには見えない。

このような状況であるから、野党、特に野党第1党とその支持者にとって、勝てない敵である自民党と共に、自民党とイコールに近い日本という国も、批判すべき対象となったのである。

だから自虐史観は仕方がないのだ、と言いたいのではない。1党優位の状況を変えなければ、このような問題からは逃れられないと言いたいのだ。「モリカケ問題」が、外交などを抑えて、1年以上、国政の最大の問題となった要因も、ここにある(見逃せない問題を含んでいるのも確かだが)。

この野党第1党(社会党の系譜)の傾向に助けられ、自民党は、本来社会党を支持する人々を、同党から引きはがすことに成功している。貧困層の一部を公明党支持に、徹底抗戦型でない被用者に「御用組合」をつくらせて、それを民社党支持にすることに成功している。公明、民社両党は野党であったが、共産党を含めた野党連携に否定的であったことから、野党の分断が成功し、五十五年体制の末期には、ついに「自公民」体制が完成した(もちろん、社会党にも大きな責任がある)。自らが直接的にはあまり恩恵を与えていない層すら、自民党は自らの陣営につないだのだ。しかも公明、民社両党に閣僚ポスト等を配分することなしに、つまり政権を分有させずに、である。

しかしその後政界は激変を経験し、労働組合は民主党支持にほぼまとまった。これを大方つなぎとめながら(労組改革も必要だが)、民進党系が創価学会員、新たな貧困層の支持を得ることは、今からでも可能なのではないだろうか。左派政党として、国民政党として、自民党政治の利益を直接受けない人々の支持を、根気強く求めていく必要がある。

民主党→民進党は確かにそのような姿勢を打ち出してもきた。しかし実態は、比較的裕福な正規雇用の人々を守るものとなっている連合(日本労働組合総連合会)の影響力が強く、アルバイトや派遣社員と、正社員との格差を埋める同一労働同一賃金は実現させることができず、非正規雇用の制限も、法案を成立させはしたが、効果は疑問視されている。このようなことを考えると、民進党よりは連合から自由になった立憲民主党には、効果的な解決策の提示を期待したくなる。

 

比例代表制でない選挙制度と1票の格差→

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